『FXのリスク』とは?FX初心者がリスクを回避するための12の知識

FXのリスク(初心者必読) FXに役立つ話

あなたは、FXのリスク(危険性)をちゃんと理解していますか?

後になって借金を抱えて「こんなはずじゃなかったのに……」と後悔しないように、あらかじめFXのリスクについて一通り知っておきましょう。

リスクとは、FXの世界では「不確実さの度合い」を意味する言葉であり、未来に何が起こるか分からない為替相場は、文字通り「高いリスクのある世界」なのです。

今回は、FX初心者が知っておくべき「FXのリスク」について、その危険さと対策について出来るだけ分かりやすくお伝えしていきます。

「何だか難しそうだな」と思ったとしても、「なるほど、そういうリスクがあるんだな」と一通り知っておけば、将来「これは危ないかも?」と気づいてリスク回避をしやすくなります。

その結果、FXで稼げるようになる可能性も高まりますので、ぜひ最後まで目を通して下さい。

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まず最初に知って欲しい“FXのリスク”

最初に理解して欲しい重要なFXのリスクは──

FX口座のお金をすべて失うだけではなく、それ以上の損失(借金)を抱えてしまう可能性がある。

──ということです。

つまり、FX口座にあるお金をすべて失った上に、「さらに○○万円を支払って下さい」とFX会社から請求される(借金を抱えてしまう)可能性があるわけです。

もしあなたがFXのリスクについて何も知らなければ、最悪の場合、ある日突然そんな事態に陥ってしまうかもしれません。

それは、これから説明する「レバレッジ効果のリスク」と「強制ロスカットのリスク」が主な要因となって起こります。

このような悲劇に見舞われないためにも、以下の12項目のリスクについて、しっかりと知っておいて下さい。

①トレーダーの無知によるリスク

これから説明していくように、FXのリスクには色々なものがありますが、本当の意味でもっとも危険なのは「それが危険だと知らないこと」──つまり「無知であること」だといえます。

例えば以下の項目はどれも大きな問題であり、重大なリスクをはらんでいますが、ポイントは本人がその危険性に気づいていない、もしくは知らないという点です。

失敗につながる大きな問題

  1. トレードルール(手法)をもっていない。
  2. 為替レートの値動きの傾向を知らない。
  3. 損切りの逆指値注文をつかっていない。
  4. 経済指標やイベントによる値動きへの影響を知らない。
  5. 1トレード当たりの損失額が大き過ぎることに気づいていない。
  6. FX会社が定めている決済方法やロスカットルールを知らない。
  7. そもそもリスクについて知らないし、考えたこともない。

これが「トレーダーの無知によるリスク」です。

しかし、このリスクは今ここで解消し始めることが出来ます。

この先の内容をよく読んで、そして他の記事も活用しながら、上記のような問題点をひとつずつ解消していき、無知によるリスクを減らしていきましょう。

まずはこの記事を読むことで、FXのリスクについて無知とはいえないレベルに達するはずです。

多くの人はリスクのことを真剣に考えません。そんな中、この記事を読んでいるあなたは、他の人よりもFXの世界で生き残ってチャンスをつかめる可能性があります。

ぜひその調子でリスクについて理解を深めていきながら、FXでの成功を目指していって下さい。

関連記事 FXで問題のあるトレードスタイルの解説まとめ

②為替レートの変動リスク

FX(為替相場)では週末を除く24時間、常に為替レートが変動しています。

じわじわと少しずつ上がったり下がったりしたかと思えば、突然「ドカン!」と激しく上昇したり下落したりします。

下のチャートは、そんな値動きの一例です(クリックすると拡大します)。

アップルショックによる大幅下落

これはドル円の5分足チャートなのですが、たった1本のローソク足で300pips(3円)も下落しているのが分かります。他の小さなローソク足と比べてみれば、その大きさの違いに驚くのではないでしょうか?

「為替レートは常に変動している」──これ自体がひとつのリスクなのです。

もしあなたがこの状況で買いポジションを持っていたとしたら、わずか5分間で莫大な含み損を抱えてしまうということです。

このように、FXの値動きは「利益の源」であると同時に「大きなリスク」であり、FXは常に損失と隣り合わせなのだということを忘れてはいけません。

以下、為替レートの変動リスクについて、いくつか補足解説をしておきます。

為替レートの変動に対する誤った理解

FX初心者にとてもありがちなこととして、目の前の短期的で一時的な値動きを「強いトレンドの発生」だと誤解して、その方向へ大きくて無謀なポジションを立ててしまう──というものがあります。

初心者のチャート観察力は大抵の場合、あまりにも近視眼的なものになりがちです。

目の前の値動きがどれもエントリーチャンスに見えてしまう結果、突発的に起きる一時的な強い値動きに対して「乗り遅れたくない」という焦りの感情を持ってしまうのです。

そのようなエントリーの結末は、いわゆる「高値づかみ」と呼ばれるような後悔を伴うものになる可能性が大きいです。

このような近視眼的なトレードをしないためには、数多くの過去チャートを見て検証することを通じて「値動きの傾向」についての理解を深めることが必要です。

経済指標やイベントによる変動リスク

あなたは、主要な経済指標がいつ発表されるか知っていますか?

そして、過去にそれら経済指標の発表によってどのような値動きが発生したのか知っていますか?

笑えない「初心者あるある」のひとつとして、緩やかな上昇トレンドに乗って買いポジションを持っていたところ、突然チャートが壊れてしまったのかと思うくらい急激な下落が起き、持っていたポジションがあっけなく強制ロスカットになってしまう、という話があります。

これは「米雇用統計」という、最も重要な経済指標のひとつの発表時刻を知らなかったことから生まれた悲劇です。

何が起こったのか分からない内に証拠金が吹き飛んでしまい、これも激しい後悔をもたらすばかりとなります。

ネット上にはFX会社が提供する「指標カレンダー」というものがありますので、事前に発表時刻をしっかりとチェックする習慣を身に着けておきましょう。

③電子システム利用(インターネット取引)のリスク

FX取引は、インターネット上のシステムを介して行われています。

あなたのパソコンやスマホからFX会社にログインして、為替レートの配信を受けたり、エントリーや決済の注文を出したりしているわけですが、そこには電子システムならではのリスクが潜んでいます。

そのリスクの筆頭は「あなたの操作ミス」です。

操作ミスの例

  1. 「買い」と「売り」を間違う。
  2. 売買数量(ポジションサイズ・ロット数)を間違う。
  3. 取引する通貨ペアを間違う。
  4. 注文の種類を間違う(指値と逆指値、エントリーと決済など)。
  5. 間違って複数回クリックして多重注文をしてしまう。

取引に人手を介さず、すべてインターネット上のシステムで行われるFXでは、あなたの操作ミスが損失に直結してしまうので注意と対策が必要です。

ですからFX会社が提供している取引ツールの操作性は、とても重要なチェックポイントになりますし、自分でチェックシートを用意したり「指差し確認」をしたりするのも有効な対策です。

また、FXのインターネット取引では、インターネット環境のトラブルも大きなリスク要因になります。

主なインターネット環境のリスク要因

  1. FX会社のサーバートラブル。
  2. 取引ソフトウェアのバージョン不適合(ソフト更新のし忘れ)。
  3. インターネット回線の接続不良(プロバイダーや上位回線のトラブル)。
  4. 回線トラフィックの混雑や通信遅延。
  5. 停電。
  6. 落雷などによる機器の故障。
  7. バッテリー切れ。

対策としては、複数のFX会社に口座を開設しておいたり、パソコンとスマホの両方でトレード環境を用意しておいたり、天気予報をチェックして落雷の可能性のあるときには取引を控えたり──といったものが挙げられます。

もし、エントリーした直後にインターネット回線にトラブルが生じて、何の操作も出来なくなったら、あなたはどうしますか?

事前にこうした想定をして対策をとっておくことが必要なのです。

例えばエントリーの際、必ず同時に損切りの逆指値注文を入れておくのは、とても有効な対策のひとつです。

また、利用しているFX会社が電話で取引注文を受け付けているなら、電話番号をチェックしておきましょう。最悪の場合、電話をして決済してしまえばリスクは限定できます。

他には、複数のFX口座を使い、操作不能に陥った口座のポジションと同じサイズの逆ポジションをもつ方法(これを両建てといいます)もあります。

④レバレッジ効果のリスク

レバレッジとは「テコの原理」をあらわす言葉で、少ない資金で大きな取引を行うための仕組みのことです。

このレバレッジを用いることで、少ない資金を効果的に運用することが出来るため、金融取引の世界では広く用いられています。

下の図は、「20倍のレバレッジ効果」によって、5万円の証拠金で100万円分の取引が可能になることを示しています。

レバレッジ効果の図

5万円の証拠金で100万円分のドルを買い、それが10%上昇した場合、あなたは10万円の利益を得ることが出来ます。

本来なら5万円分しかドルを買うことが出来ず、利益も5千円しか得られないはずが、レバレッジ効果を用いることで、20倍もの利益を手にすることが出来たわけです。

しかしレバレッジ効果は当然、損失も拡大させます。

この例でいえば、もしドルが10%下落してしまったら、あなたは10万円の損失を出すことになるのです。

ということは、証拠金の5万円を失うだけではなく、さらに5万円の借金を抱えてしまうわけです(実際には、そこに至るまでにFX会社からマージンコールが届きます)。

このように、レバレッジ効果には大きなリスクがあるため、証拠金とポジションの大きさのバランスには細心の注意が必要です。

過剰なトレード回数になってしまうリスク

「レバレッジ取引では、手元の資金に対して利益が大きくなるが、損失も同様に大きくなる」といわれても、多くのFXトレーダーは前者の「利益が大きくなること」にばかり目が向きがちです。

実際、海外FX会社が設定している「100倍以上」のレバレッジでのトレードは、短時間で手元資金が倍に増えたりすることもあり得ます。

そのため、激しい値動きを目の当たりにすると、その値動きで何とかして稼ごうとトレード回数が増えてしまう傾向が見られます。

しかし多くの場合、買ってはダメ、売っても損切りという結果に終わり、高いレバレッジによってあっけなく証拠金が底をついてしまうのです。

このようにレバレッジ取引には、過剰なトレードを心理的に引き起こしやすいというリスクも存在しているのです。

レバレッジについては、下の記事で詳しく解説しています。

解説記事 『FXのレバレッジ』とは?その意味と仕組みを分かりやすく解説

⑤信用リスク(FX会社の倒産リスク)

FXをするには、FX会社に証拠金を預け入れる必要がありますが、そこでもしFX会社が倒産したり不祥事を起こしてしまったら、あなたのお金はどうなってしまうのでしょうか?

幸い、国内のFX会社の場合、私たちのお金はFX会社とは別のところが管理するルールになっているため、万が一FX会社が倒産してしまったとしても、お金は全額戻ってくるようになっています(この仕組みのことを「信託保全」「分別管理」といいます)。

ですので、国内のFX会社をつかってFXをしている限り、この信用リスクを気にする必要はないといえます。

ただし、海外のFX会社を利用する場合は事情が異なります。そのFX会社がある国ごとに法律が違うため、信託保全や分別管理の状況も異なっています。

そのため海外FX会社が倒産したり不祥事を起こしたときは、全額は保証されなかったり、そもそも全く保証されない場合もあります。

こうした点から、海外FX業者を利用する場合は、特に信用リスクが重要になってくるといえるでしょう。

信託保全と分別管理がなされていても問題は残る

国内の金融庁登録FX業者なら、証拠金が失われてしまうリスクは事実上ないと言えますが、それでも問題は残ります。

実際にFX会社が倒産するなどした場合、預け入れていた証拠金がすぐに手元に戻ってくる訳ではありません。

様々な法的手続きを経る必要があるため、一説には事実上数か月以上の時間が必要になるとの意見があります。

そうなると、もしトレード資金をすべて一つのFX口座に預け入れていた場合、長期間トレードが出来なくなります。

そこでさらに安全策を取るなら、常時複数のFX口座にトレード資金を分散させておくか、手元のトレード資金の半分だけを使うという方法がおすすめです。

「FX会社に問題が起きる可能性なんて高くないだろう」と思う気持ちは分かりますが、実際に過去に私自身がこうした体験をしていますので、資金に余裕があるなら取引口座を分散させるか、そもそも半分の資金だけを使ってトレードすることを検討してみて下さい。

下の記事は、私が実体験した「FX会社の信用リスク」のエピソードです。

解説記事 FX会社が突然営業停止!?実話エピソード「そのとき私はどうしたか」

⑥強制ロスカット(強制決済)のリスク

強制ロスカットとは、FX会社によって強制的に損切りされることです。

どういうときに強制ロスカットされるかというと、含み損が証拠金に対して一定割合を超えてしまった時点です。

ここで用いられるのが「証拠金維持率」という数字です。

証拠金維持率の例

  1. 10万円の証拠金をつかって、限界ギリギリの大きなポジションを持った。
    「証拠金維持率」=100%
  2. その後、思惑とは反対方向にレートが動いて、5万円の含み損が発生してしまった。
    「証拠金維持率」=50%

強制ロスカットのルールの例

  • 証拠金維持率が特定の値を下回った時点で(例えば50%)即時、強制ロスカットされる。
  • 毎日、所定の時刻(例えば朝6時)に証拠金維持率が100%を下回っていると、強制ロスカットされる。

FX会社による強制ロスカットは、「顧客が借金を抱えてしまうような事態になるのを防ぐための、最後のセーフティーネット」として設けられたものです。

つまり強制ロスカットが執行されるということは、その時点で証拠金に深刻なダメージがあるという意味でもあります。

いうなれば「命が助かっただけでも良かったですね……」という状態だといえるでしょう。

FX初心者がやりがちなパターンとしては、証拠金を目一杯つかって大きなポジションを持ち、自分では普通に含み損に耐えていたつもりが、いつの間にか強制ロスカットされていた──というものがあります。

これは特に、海外FX口座を使ってトレードしている場合に見られるもので、ひどい場合はエントリーした次の瞬間に強制ロスカットされてしまうケースもあります(レバレッジが400~1000倍&スプレッドが広い場合)。

さらに、ポジションが強制ロスカットされてしまう時に「流動性の低下リスク(※この後に解説します)」も合わさってしまうと、損切りの決済レートが非常に不利なものになってしまう傾向があります。

そのため証拠金を上回る損失が確定してしまい、FX会社に対して借金が出来てしまう可能性があるのです。

そんな悲劇の実例として有名なのが、「スイスフラン・ショック」です。詳しくは下の記事で解説しています。

解説記事 『スイスフランショック』とは?偽りの聖杯手法に溺れたトレーダーたち

海外FXの場合、“ゼロカット”という「証拠金を上回る損失を免除する制度」があるFX会社もあります。

⑦損切り注文(ストップ注文)のリスク

損切り注文(損切りの逆指値)は資金を守るためのものであり、トレードを続けていく上でとても重要で欠かせないものです。

損切り注文をつかうことには、主に次のようなメリットがあります。

損切り注文の主なメリット

  1. 早い段階で損失を確定させることによって、資金がそれ以上損なわれるのを防ぐ。
  2. ポジションを決済すると証拠金が解放されるため、次の有望なトレードチャンスを逃さずに済む。

しかし、損切り注文が執行される状況やタイミングによっては、想定外の大きな損失を確定してしまう可能性があります。

典型的なのは、「流動性の低下リスク」や「スリッページのリスク」が影響して、予定していたレートよりも不利なレートで損切りされてしまうケースです。

例えば、ニュースなどの何らかの理由で値動きが一方向へ偏った状況では、一時的に流動性が低下してスプレッドも広がる傾向があります。

こうした状況で損切りが執行された場合、スリッページも大きくなって想定以上の損失になるケースが見られます。

他にも、週をまたいでポジションを保有した場合、週明けのレートが損切り注文を超えて始まってしまうと、予想外の大損失になるケースがあるので注意が必要です。

下のチャートは、そうした「週またぎによる予想外の大損失」の例です。

FXの週またぎによる予想外の大損失のチャート

このように損切り注文にもリスクがあるわけですが、だからといって損切り注文を使わずにトレードしたり、「確定させるまでは、含み損は損失ではない」といって含み損を軽視したりするのは、シートベルトをせずに運転をするようなもので、非常に危険です。

損切り注文を使わないと、もしものときの被害が深刻になってしまいますので、損切り注文はリスク管理の「いろはの“い”」と心得て、しっかりと活用していくことが大切です。

解説記事 FXで損切り注文を入れないリスクとは?その危険さと対策方法について

⑧スリッページのリスク

スリッページとは、為替レートの変動によって生じる、注文したレートと実際に約定したレートとの差(ズレ)のことです。

例えば成行注文は、FX会社に注文が届いたタイミングのレートで執行される仕組みになっています。ですのでレートが大きく変動している状況だと、思わぬレートで約定することになり、このときの差(ズレ)がスリッページとなって表れます。

例えば、モニター上では「100.00」のレートで注文したのに、実際に約定したレートが「100.05」だった場合、この「0.05」の差がスリッページです。

このように、モニター画面で見ていたレートと、実際に約定したレートが、大きく異なってしまうリスクのことを「スリッページのリスク」といいます。

解説記事 『スリッページ』とは?意味と原因&対策。おすすめ許容設定値

スリッページが発生する状況は様々ですし、FX会社によっても違いがあります。

そこで、自分が使っているFX会社のスリッページがどの程度のものなのかを、本格的なリアルトレードの前に実際に試してみることが、大切なリスク対策のひとつになります。

自分のFX口座のスリッページをチェックする際には、下の記事で解説している「スクラッチトレード」を活用してみるのがおすすめです。

解説記事 『スクラッチトレード』とは?FX初心者がリアル口座でやるべき練習方法

許容スリッページの設定によるリスク

ほとんどのFX取引ツールには、注文時にトレーダー側が許容する(受け入れる)スリッページ幅を事前に決められる設定が用意されています。

例えば、許容スリッページを「2.0pips」に設定した場合、取引画面で発注したときの為替レートと、その注文がFX会社側で処理されたタイミングでの為替レートとが「2.0pips」以内の誤差に収まっていれば、約定(取引成立)となります。

逆に言うと、発注時と処理時のレートが許容スリッページ以上に離れてしまっていた場合は「約定拒否」という形で扱われ、注文が成立しません。

これはつまり、「ここでエントリーだ!」といってエントリー注文を出しても、値動きが激い場合は約定拒否になってしまいポジションを持てない可能性があるということです。

これは成行注文で決済をしようとする場合にも起こる問題で、「ここで決済だ!」と思って利益確定や損切りの成行注文を出しても、決済できない可能性があるのです。

既にお分かりの様に、何としても損切りしたい場面で約定拒否になってしまうというのは、とても恐ろしいリスクです。

この対策としては、許容スリッページ設定を大きな数値にしておくか、もしくは常に損切り用の「逆指値注文」を設定しておくようにすることです。

FX会社によって異なりますが、多くの場合は逆指値注文には許容スリッページ設定は適用されないルールになっていますので、エントリー注文と同時に損切りの逆指値注文を発注することを推奨します。

逆指値注文に許容スリッページ設定が適用されるかどうかについては、事前にFX会社の規約を確認するかFX会社にお問い合わせ下さい。

⑨流動性の低下リスク(スプレッドの拡大やスリッページの増大)

流動性とは、FXで取引されている通貨の量(取引額)や取引頻度のことです。

たくさんの市場参加者によって頻繁に取引されている状態を「流動性が高い」といい、その反対を「流動性が低い」といいます。

あなたが発注ボタンをクリックすると瞬時にエントリーや決済ができるのは、あなたの注文に応えてくれる相手が大勢いてくれるから──つまり、その通貨ペアの流動性が高いからです。

逆にいうと、何らかの理由で流動性が低くなると、スプレッドが広がったり大きなスリッページが発生しやすくなり、あなたのエントリーや決済の注文が執行され難くなる可能性があるということです。

この「思ったようにエントリーや決済ができない」というのは、とても深刻なリスクだということが、あなたにも想像できるのではないでしょうか?

特に「損切りをしたいのに思うように決済できない」という状態に陥ってしまうと、想定外の大きな含み損を抱えてしまい、FX会社から追証(追加証拠金)を求められ、最悪の場合は強制ロスカットになってしまいます。

これが「流動性の低下リスク」です。

FXで流動性が低下する要因としては、主に次のようなものがあります。

流動性が低下する主な要因

  1. 経済指標の発表や事件などのニュースによって、一時的に売買が一方向に偏ってしまったとき。
  2. 季節的・時間的な要因で相場参加者が少なくなったとき(いわゆる閑散相場)。
  3. そもそも、その通貨ペアを取引する市場参加者がいつも少ない。

あらかじめこうした要因を知っておけば、事前にリスクを下げることが出来ます。

具体的には、指標発表の時刻をチェックしてトレードを避けたり、年末年始はトレードを休んだり、南アフリカランドやトルコリラといったマイナー通貨は避けたりする、ということです。

以下、流動性に関する記事を紹介しておきますので、参考にして下さい。

解説記事 『閑散相場』とは?フラッシュクラッシュのリスクと対策をFXチャートで解説

解説記事 『経済指標』とは?指標カレンダーの使い方&指標トレードのリスク

⑩金利変動(スワップポイント変動)のリスク

FXでは通貨の売買取引だけではなく、金利の取引も同時に行われています。

例えば、金利の安い通貨(日本円など)で金利の高い通貨(トルコリラなど)を買うと、ポジションを持っている間、金利差の分だけ利益を得られるのです。もちろん、金利差がマイナスの場合は支払う必要があります。

この金利差のことを「スワップポイント」といいます。金利差の計算は毎日おこなわれていて、毎日FX口座に入金(もしくは支払い)されます。

日々の金利の変動によって、受け取りまたは支払いの金額が変わるため、最初はスワップポイントを受け取っていたポジションでも、いつの間にか支払いが必要になる可能性がある点に注意が必要です。

しかし一般的には、こうした金利変動のリスクよりも、「為替レートの変動リスク」の方が大きくて深刻なリスクです。

スワップポイントの特徴と、為替レートの変動リスクについて、下の記事で実際のチャートを使って詳しく解説していますので参考にして下さい。

解説記事 『スワップポイント』とは?放置で稼ぐ方法に潜む大損のリスク

⑪相対取引のリスク

相対取引とは、取引所などの市場を通さずに、売り手と買い手が、当事者同士で価格や売買数量などを決めて行う取引のことです。

FXでは、株式市場の証券取引所のような「特定の場所」での取引は行なわれておらず、当事者同士が売り手と買い手になって、「相対(1対1)」で値段や数量や決済方法などを決めて取引しています。

私たちトレーダーがFX会社で取引をする場合が、この相対取引にあたります。

例えば、基本的に通貨を買うときはFX会社から買うことになり、いうなれば「FX会社の言い値」で買っているわけです。

そのため、FX会社の都合(リスクヘッジ)によってレートが調整されたりスプレッドが広がるなど、結果的に不利なレートで約定させられる可能性があるのです。

現実問題として、注文の通りやすさ(約定力)やスリッページの程度、スプレッドの安定性などは、FX会社ごとに異なります。

そのため、各FX会社の特徴を理解した上で、あなたが納得できるFX口座を使ってトレードすることが大切なリスク対策になります。

FX初心者におすすめ出来るFX会社や関連ツール類については、下の記事で解説していますので参考にして下さい。

解説記事 初心者におすすめのツールやFX口座は?トレード環境の準備ガイド

関連用語 相対取引

⑫メンタル(精神的・心理的)リスク

ここまで解説してきたリスクを理解できたとしても、実際にトレードする「FXトレーダー本人」が冷静に正しく行動できなければ、あなた自身がFXのリスク要因になってしまいます。

優位性のあるトレード手法を使っていても、連敗することは当然あります。

そんなとき感情的になって、「損失を取り返す!」といって無茶なトレードを繰り返してしまうと、メンタルが崩壊して深刻な損失を出してしまい、激しく後悔する可能性があります。

こうしたメンタルのリスクに対して事前に対策をしておくことは、長期間安定してFXで利益を出し続けていくためには必須だといえます。

メンタル(精神的・心理的)リスクの危険性と、その対策方法については、以下の記事を参考にして下さい。

解説記事 FXで失敗しない方法とは?チェックリスト編。緊急時のパイロットに学ぶ

解説記事 恐怖ストレスと闘争・逃走反応。FXで勝てないのはバカになってるから?

解説記事 FX初心者が集団パニックを避けるためのセルフマネジメント・自己管理

解説記事 FXで勝てない感情トラブル。イライラしたりムキになっていませんか?

初心者に知っておいて欲しいFXのリスク~最後に

実は、今回解説した内容の多くは、FX口座を開設するときに承諾する必要がある『契約締結前交付書面』という文書に書かれているものです。

参考 店頭外国為替証拠金取引に係るご注意 – GMOクリック証券

つまり、後になって「そんなこと聞いてない!」といっても通用しないということですから、ぜひ今回の記事を参考にして、FXのリスクについて理解を深めてもらえればと思います。

以上、『FXのリスク』とは?FX初心者がリスクを回避するための12の知識──についてお伝えしました。

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