FXをするなら、必ず注目しなければならない経済指標。
経済指標とは、その国の経済状況を表した、さまざまな統計データのことです。
米雇用統計や政策金利発表など、注目度の高い重要な指標発表のときには、世界中のFXトレーダーたちが、かたずを飲んで結果を待ちます。
デイトレードやスキャルピングといった短い時間軸でのトレードでは、損切りもタイトにしますので、値動きが激しくなる経済指標の発表タイミングは、大きなリスク要因のひとつだといえるでしょう。
FX専門用語解説シリーズとして、FXにまつわる用語・単語を取り上げていますが、この記事では、「経済指標」の意味や、FX取引での利用方法、それにまつわる関連情報をお伝えしていきます。
経済指標発表での「FX初心者あるある」
「エントリーした次の瞬間、とんでもなく大きな値動きに巻き込まれて、一気に含み損になってしまい、そのまま強制ロスカット……」
なんとも恐ろしい初心者あるあるのひとつです。
これは、毎月第一金曜日の日本時間午後9時30分(米国が冬時間の場合は午後10時30分)に発表される、アメリカの経済指標「非農業部門雇用者数」──通称「米雇用統計」の影響をうけたものです。
米雇用統計の指標発表は夜9時30分なので、日中働いているサラリーマン副業トレーダーがやりがちなミス、と言えるかもしれません。
ポジションサイズをレバレッジぎりぎりまで大きくしてしまっていたら、「ブンッ!」と激しくレートが動いたら、ひとたまりもありません。
「いやいや、ちょっと、いまのナシ!」といっても、相場は許してくれません。
こうならないためにも、まずは重要な経済指標が、いつ何時に発表されるかをしっかりと把握しておくことが必須です。
わざわざ、しなくてもいい「FX初心者あるある」をする必要はありません。
経済指標カレンダーを活用する
ありがたいことに、経済指標発表の日時は、各FX会社から「経済指標カレンダー」として提供されています。
私が利用しているのは、おもに次の3つのカレンダーです。
その日のトレードを開始するときには、かならず目を通しておいて、重要な指標発表の時間はメモしておきましょう。
リスクを避けるために。初心者向けの使い方
初心者向けにおすすめな、経済指標カレンダーの使い方として──
たとえば「みんかぶFX」の指標カレンダーの場合だと、星マークが4つ以上の指標発表では、その時間にポジションをもって通過しない(またがない)ようにしておくだけでも、突発的な値動きで含み損をかかえてしまうリスクを下げられるでしょう。
そのとき、「星マーク4つの経済指標なのに、指標が発表されても全然動かないぞ?」とか、「星マーク5つの指標発表があるからなのか、いまは全然レートが動かないなあ……」といったことに気づくかもしれません。
そうした観察の経験がこれから先、初心者を脱したあなたにとって、大切な資産となって生きてくるのです。
指標トレードという甘い誘惑
過去に「指標トレード」というものが大流行した時期がありました。
米雇用統計や、FOMCの政策金利発表など、超重要指標の発表の直前に「上か下か」を予想してポジションをもち、発表される結果によって「当たれば大儲け」「ハズレれば損切り」という、文字通りのギャンブルトレード。それが「指標トレード」です。
それは過去の一時期、悪い意味で「FXの代名詞」と呼ばれたほど、たくさんのFXトレーダーたちを熱狂させました。
そして、もうひとつの指標トレードとして、経済指標の発表によって一方向へ大きく動き出したところで、その方向へエントリーするという、いわゆる「飛び乗りトレード」というものもあります(IFO注文を活用する方法もあります)。
とにかく大注目された経済指標は、発表直後に大きく動くケースが多いので、一獲千金を狙うトレーダーたち、それも多くの初心者トレーダーたちがこぞって、この「指標トレード」に参加しました。
指標トレードにひそむ大きなリスク
「飛び乗り」タイプの指標トレードには、次のような大きなリスクがあります。
- 大きな値動きに翻弄され、ポジポジ病になる。
- スプレッドが大きく広がり、不利なレートで約定してしまう。
- 大きく値が飛んで、想定外に大きな損失を出してしまう。
これらのリスクについて、順に見ていきましょう。
あまりに大きな値動きに翻弄されるリスク
まず、発表直後の値動きがとても大きく、乱暴なほど上下する可能性があることです。
以下の動画を見てください。動画スタートから15秒後に米雇用統計が発表されます。
この、激しく乱高下する動きの中でエントリーしたとして、そのポジションを冷静にもっていられますか?
もし、怖くなって損切り決済したあとに、エントリー方向へグングン動いていったら、どう感じますか?
「ムギギギ……!」「ぜったい、取り返す!」
こんな激しい動きの中で「ポジポジ病」をやらかしたら、どんなヒドイことになるか想像がつくというものです。
そのときはもう、往復ビンタどころの騒ぎではなくなるはずです。
「はあ、なにやってんだ、オレ……」
そう思ったときには手遅れです。
スプレッドが大きく広がり、不利なレートで約定してしまう
重要なポイントとして、経済指標が発表される場面では、スプレッドが大きく広がります。
動画の中でも、青と赤のマークで表示されたレートの間隔(=スプレッド)が、大きく広がっていることが分かります。
どういうことかというと、FX会社もリスクを嫌いますから、そのためにスプレッドを大きく広げて、乱高下でのリスクをトレーダーにまわしてくるためです(※詳しい説明は、また別の記事であらためてお伝えできればと思います)。
FX会社も営利企業であってボランティアではないのですから、これはある意味で当然の対応です。
そのことを知らずに儲けばかりに目がいってしまい、指標発表でエントリーしてしまうことは、「大きなスプレッド分のハンデを自分で背負い込むこと」になるのです。
「よし、買いでエントリーできた!」と思ったら、自分の買値はチャートのはるか上、ものすごい含み損からスタート……なんてことは当然のように起こります。
もし、そのまま反転していったら、あなたは冷静に正しく損切りできますか?
指標ギャンブルは、もってのほか
指標発表の直前に「上か下か」を予想してポジションをもち、それが狙った方向へ動くことに賭ける、そんなギャンブルトレードには「飛び乗りトレード」を上回るリスクが存在します。
それは、発表直後に「値が飛ぶこと」です。
さきほどの動画でも、指標発表の直後、瞬間的に大きく上へレートが飛んでいく様子がわかります。
日ごろFXでチャートを見ていると、レートの動き(値動き)は、ジワジワと連続的に動いていくものだと思い込んでいますが、実際にはちがいます。
その瞬間ごとに売り注文と買い注文がマッチして(成立して)、その瞬間での為替レートが決まっていきます。
普段はその「売買が成立するレート」の変化が少ないので、ジワジワ動いているように感じられるだけです。突発的なできごとがあれば、「売りと買いの注文が全然成立しない」という事態に陥ります。
すると、たとえば瞬間的に買い注文が大量にでた場合、それを受けてくれる売り注文が不足するため、相場は注文が成立するレートを探して、瞬間的に一方向へ動くことになるのです。
指標発表の時刻に「ボンッ!」と50~100pipsも瞬間的に動いたとき、それが思惑と反対だったとしたら、小さく設定しておいたロスカット注文など、まったく無意味になります。
これは極端な話でもなんでもなく、経済指標発表の直後に強制ロスカットされて、口座が吹っ飛んだという話は、よく目にしたものなのです。
指標ギャンブルトレードは、ポジションをもつこと自体に難しさはないので、初心者でも簡単に行うことができてしまいます。
なので、目先の儲け話に目がくらんだ初心者トレーダーたちが、本当にたくさん強制ロスカットにあって、砕け散り、FXから退場していきました。
あなたには、そんなトレードはしないで欲しいのです。
経済指標とはなにか?
経済指標とは、世界各国の政府や、経済関連の中央省庁、中央銀行が発表する「経済に関する統計情報」です。
商業売上や工業生産、物価や金利、労働人口の推移、個人・法人の資産状況、貿易収支など、さまざまなデータとその変動・変化を通じて、その国の景気の現状と、今後経済がどうなっていくのかを示すことが、経済指標の役割です。
このように経済指標には様々な種類があり、その国の経済状況を測る上での重要な数値として、マーケットは常に経済指標に注目しています。
経済指標の内容によって、その国の経済状況とその将来性が見えてくるため、FX取引で中長期的なトレードをする際には、エントリーと決済における重要な判断材料になってきます。
また、経済指標は発表されるだけではなく、事前に金融機関や調査会社が予想を報じます。
この事前予想をもとにして、FX(為替取引)のみならず、ファンダメンタルズを重視するあらゆる相場参加者たちは、「これからの相場はどう動くか?」を考え行動を起こしています。
デイトレードやスキャルピングといった短期売買をするFXトレーダーにとっては、経済指標が発表されるとき、その結果内容がマーケットにもたらすインパクト(影響)がポイントになってきます。
市場参加者たちの予想を裏切ったり上回ったりした場合、そのショックによって短期的に激しく大きな値動きを見せることがあり、これはチャンスであると同時にリスクでもあります。
予想と結果の関係によって為替相場にインパクトをもたらす
経済指標の発表が大きな変化を伴うものだったとしても、それが事前に予想された範囲内のものであったなら、市場への影響は限定的なものになります。
これを「織り込み済み」といいます。
逆に、発表された指標にほとんど変化がなくても、事前に「大きく上昇するはず!」と予想されていた場合は、「予想とは違った!」というギャップからくるインパクトを市場にもたらすことになります。
こうした経済指標の結果による市場参加者のショックのことを、ポジティブサプライズ、ネガティブサプライズと呼びます。
米雇用統計や政策金利発表といった大イベントの前には、為替相場は値動きが停滞し始め、様子見の様相を呈し、穏やかな海面の“なぎ”のような相場状況になりがちです。
そして指標発表と同時に大きく飛ぶように値が動き出し、その値動きに追随しようとするトレーダーの取引(指標トレード)や、損切りを余儀なくされたポジションの決済注文による更なる値動きなどによって、チャート上は文字通り狂喜乱舞・阿鼻叫喚といった様相を呈します。
そうかと思うと、指標に何のサプライズも無かった場合や、実は注目度や影響度が低かった結果、まったく何事もなかったように時間だけが過ぎていくというケースもあります。
未来が分からないFXトレードの世界をそのまま表したようですが、経済指標の存在はそんな未来の分からなさを体現した存在と言えるかもしれません。
以上、FX専門用語解説「経済指標」指標カレンダーの使い方&指標トレードのリスクについて、お伝えしました。
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