あなたはFXでエントリーするとき、損切り注文を入れていますか?
「ダメなときは自分で損切りするから、入れてないよ」という人も多いかもしれませんが、しかし、それだと思わぬトラブルに巻き込まれて、とんでもない損失を被るかもしれません。
今回は、損切り注文を入れずにFXをする危険・リスクと、その対策方法について解説していきます。
FXで損切り注文を入れないと、どうなるか?
デイトレードであれ、スイングトレードであれ、FXで損切り注文を入れずにトレードすることは、それ自体が大きなリスク(危険)となります。
このことを理解してもらうために、いくつか実例をあげていきましょう。
重要指標の発表を知らずにホールドし続けて、損切りになったケース
「重要な経済指標の発表を知らずにいたら、いきなり大きく反対方向へ動いて、とんでもない損切りになってしまった……」
これは典型的な「FX初心者あるある」です。
「つまり、米雇用統計はとても大きく動くから、ポジションをもったまま、発表時刻の21時30分を通過したらダメなんでしょ?」
はい、そうです。
そんなことをすると、一気に何10pipsも動いたとき大きな含み損を抱えてしまいます。ポジションのサイズが大きければ、ヘタをすれば強制ロスカット(FX会社による損切り)になる危険があります。
ですから、重要な指標発表をひかえている場合は、事前にポジションを決済しておくのが安全です。
例えば「指標発表の15分前に決済する」などのルールを決めておくことがおすすめです。
ただ、ギリギリまで粘るのはおすすめ出来ません。
発表内容のリークによるものなのか、ちょっとした動きが集団心理的なパニックを引き起こしたのかは分かりませんが、数分前の時点でいきなり動き出すケースも見られるからです。
夜中に集中力が切れて、ぼんやりしていたら……
「重要な指標発表はバッチリ把握してるから大丈夫だよ」というかもしれませんが、では、こんなケースはどうでしょう?
その日は午前2時を過ぎても動きがあったので、あなたはダラダラとトレードを続けていました。
さすがに眠たくなっていますが、この日は調子が良いらしく、トータルではプラス(利益)になっています。
眠い目をこすりながらも、「取れるときに取る!」とばかりに、さらにトレードを続けます。
そうしてどれくらい時間が経ったでしょうか。
さっきエントリーした「買いポジション」が、なかなか動かないので、ぼんやりチャートをながめていたら、突然、「チャートが壊れたのか!?」と思うような激しい下落が始まりました。
「な、何だこれ!?」と思う間もなく、レートはグングン下落していき、あなたの買いポジションは、みるみる内に巨大な含み損になっていき、ついには強制ロスカット(損切り)に……。
FOMC(米政策金利の発表)をうっかり忘れて損切りに!
そうです。その大きな動きは、午前3時15分に発表される「FOMC(米政策金利の発表)」によるものだったのです。
なんということでしょう、こんなに重要な指標発表をうっかり忘れて、大きな損切りに泣くことになるなんて……。
でも人間ですから、こういう可能性は十分ありますし、ましてや夜中の時間帯だと、どんなに注意していても身体の限界があります。
他にも、重要な経済指標の発表についての危険性や対応の方法を、以下の記事で解説していますので、ぜひ参考にしてください。
突発的なレートの動きで損切りになるケースは、まだまだある
「とにかく、重要な経済指標の発表時刻に注意すればいいんでしょ?」と、指標発表にばかり気が向いているかもしれませんが、実は突発的なレートの動きが発生して大きな損失になる危険は、他にもいろいろあるのです。
突然の「要人発言」による影響
例えば、ある日突然、総理大臣が「日本円が高過ぎて問題だと思いますので、対応を検討しています」という発言をしたとしましょう。
するとFX相場はそのニュースを受けて、一気に動き出す可能性があります。まさに「寝耳に水」という状況で、相場は一時的にパニックになると思われます。
そんなとき、損切り注文を入れずにポジションをもっていたら、どうなるでしょう?
運悪く反対方向へ動いてしまったら、あっという間に強制ロスカットという結果になってしまう可能性があるのです。
重大な事件・事故・自然災害の発生による影響
どこかの国でクーデターなどの政変が起こったり、ミサイルが飛んだり、天変地異が起こったりすると、やはりこれも相場は過剰反応をみせて、パニック状態になる可能性があります。
過去には北朝鮮のミサイル発射や、東日本大震災などの影響で、突発的なレートの動きが見られました。
こうしたことは、いつどこで起きるのか、それがどういう影響をもたらすのか、誰にも分かりません。
そして分からないからこそ、起きてしまうと人々は不安と恐怖に陥り、相場はパニック状態になるのです。
FX相場の心臓をにぎる「中央銀行」の動き
突発的なレートの動きが発生する可能性を考える上で忘れてはいけない、もうひとつの要因があります。
それは、各国の中央銀行の動きです。
原則として、各国の政策金利の発表はスケジュールが決まっていますが、金融政策についての要人発言や内容のリークなどによって、相場が突発的な反応を示すことがあります。
その動きの最たるものが、為替介入(為替操作)にまつわるものです。
近年では、その効果が限定的ということもあって、表立っては介入が見られなくなっているようです。しかしそれでも、そういうウワサやムードが生まれると、FX市場はとても過敏な状態になります。
こういう状態になると、相場は大きく乱高下する状況になりやすいので、こうしたなかで損切り注文を入れずにポジションをもつのは大きなリスクであり、まったくおすすめできません。
具体例としては、2011年の日本銀行による為替介入が典型的なケースでした(このときは、投機的に高くなりすぎた円を、為替介入によって安く誘導しようとしました)。
中央銀行の特殊で危険な動きの実例「スイスフランショック」
各国の中央銀行の動きによる突発的なレートの動きを考える上で、外すことができない実例があります。
それが、いわゆる「スイスフランショック」と呼ばれるものです。
2011年9月、スイス中央銀行は、自国通貨スイスフランの値上がりを阻止するために、無制限の為替介入をはじめました。
そして2015年1月、FX相場に激震が走ります。
スイス中央銀行は突然、なんの前触れもなく「為替介入をやめます」と発表したため、スイスフラン相場は一気に「マイナス40%!」もの変動を見せました。
スイスフランショックについては、以下の記事で詳しく解説しています。
この「スイスフランショック」では、大勢の投資家が巨大な損失を被り、そのなかにはFX会社も含まれ、倒産してしまったFX会社もあったほどです。
しかし、この歴史的な大変動の中でも、損切り注文を入れていたトレーダーは難を逃れられたケースがありますので、「大事故にあったけど、損切り注文のおかげで何とか生き延びられた……」という事実が浮かび上がってきます。
もし、こうした事態のなかで、損切り注文を入れておいたのに納得がいかない損失を被ってしまった場合は、フィンマック(FINMAC)などの相談窓口へ問い合わせてみる方法があります。
FXで損切り注文を入れないリスクと対策方法~まとめ
ここまでの内容で、FXで損切り注文を入れないでトレードを続ける、その危険・リスクについて、具体的にイメージ出来てきたのではないでしょうか。
こうしたリスクを避けるためには、シンプルな行動を習慣にすることが効果的です。
おすすめは、エントリー注文と同時に損切り注文を入れること
おすすめはエントリーの注文時に、同時に損切りの注文も入れることです。
具体的には、エントリーするときの注文画面で、「ロスカットの逆指値注文」もいっしょに入れるのです。
このロスカットの逆指値注文は、「これ以上は絶対に損失を大きくしない!」という、絶対防衛ラインとして設定します。
ですから、あらかじめ1回のトレードあたりの許容損失額を決めておく必要があります。
※許容損失額の具体的な決め方は、以下の記事で解説していますので、参考にして下さい。
参考記事 大事なのはレバレッジの倍数ではなく、具体的な損失額を想定しておくこと
この注文があなたのシートベルトとなって、もしもの事故から身を守ってくれます。
この「ロスカットの逆指値注文」というシートベルトをした上で、自分の判断で損切りのタイミングをはかっていけば大丈夫でしょう。
以上、FXで損切り注文を入れないリスクとは?その危険さと対策方法について、お伝えしました。