ナンピンとは、もっているポジションが含み損を抱えているとき、同じ方向へさらにポジションを追加することをいいます。
「ナンピン」という言葉からは、負けトレードをズルズルと引き伸ばしているイメージがありますが、あなたはその本当の姿を理解していますか?
ダメなナンピンと、戦術的に行うナンピン──この違いを理解することで、ナンピンのイメージが変わります。
今回は、『ナンピン』の意味やトレードでの効果的な使い方、それにまつわる関連情報をお伝えしていきます。
ナンピンによって得られるもの
FXの世界では、ナンピンは「絶対にやっちゃダメ!」なトレードの、その最悪な例のようにいわれています。
ですから、それを知った初心者は、その全否定ぶりに圧倒されてしまい、そもそも「ナンピンが何を目的としたトレード手法なのか」を知ることすら、避けてしまっているかもしれません。
まず、ナンピンとは?
ナンピンとは、もっているポジションが含み損を抱えているとき、同じ方向へさらにポジションを追加することをいいます。
101円で買いポジションをもちましたが、どんどん下落していったので、99円で「ナンピン買い」をおこないました。
99円で最初のポジションと同じ量の通貨を買った場合、ポジション合計の平均レートは、「100円」となります((101円+99円)÷2=100円)。
ですので、レートが上昇して100円になったところで決済すれば、101円で買ったポジションもふくめて、トントンでトレードを終えることができるのです。
こうやってポジション合計の平均レート(平均取得単価・アベレージコスト)を下げていって損切りを先延ばししながら、少しの反転でトントンでの決済をして損失をまぬがれたり、さらには利益を得ようとすること──これを「ナンピン手法」といいます。
ナンピン手法の成功例
ナンピンがとても上手くいったケースを見てみましょう。
最初の買いエントリーから含み損が続くものの、ナンピン買いを4回くり返しました。
その結果、最初の買いポジションのレートよりも、ずっと低いレートで決済しているのに、なんと利益を得ることに成功しています。
これがナンピンによる「一発逆転!」の収穫なのです。
一時は含み損を抱えてピンチに陥っていたのが、一転してトントンから含み益へと変わっていくという、その開放感と興奮。
この「戻ってくれさえすれば、トントンもしくは利益確定ができる」という魅力が、含み損のトレーダーの心を甘く誘惑してくるのです。
一見よさそうなナンピンにひそむ罠
一見すると良さそうに見えるナンピンですが、当然ここには大きなワナがあります。
ナンピン買いを続けても、そのまま下落し続けてしまえば、いずれは維持証拠金不足となって、強制ロスカットという結果がまっています。
いくらナンピン買いを続けて、ポジション全体の平均取得単価を下げていったとしても、そもそも反転して為替レートが再び上昇してくれなければ、元も子もないのです。
ナンピンをしてレートが建値方向へ戻ってくれればいいですが、そのまま逆行し続けてしまうと、ナンピンによって増えたポジションの分だけ含み損が拡大・倍増してしまいます。
この、反転する見込みのないまま、ひたすらナンピンを重ねていく状況は「無限ナンピン」と呼ばれ、FXの恐ろしいホラーとしてトレーダーを怖がらせています。
この結末の悲惨さと、自業自得ともいうべき状況に対して、人々はナンピンのことを「愚かなトレード」と呼ぶわけです。
ナンピンを戦術的につかう方法
ナンピンで失敗するケースの特徴を知ることによって、ナンピンのメリットである「平均取得単価を有利にすること」を活かせるようになってきます。
とはいえ、これからお伝えすることは、初心者トレーダーにはおすすめできません。
今は「こういうエントリーの方法もあるんだな」と、将来のための知識として覚えておく程度にしておいて下さい。
さて、そもそも失敗するナンピンは、大きなトレンドに逆らったまま、ズルズルとポジションを保有し続けることによって生まれます。
であるならば、この反対の状況で、しっかりとした資金管理をした上で計画的なエントリーをすれば、ナンピンのメリットを享受できる可能性が出てきます。
「高値づかみをしたくない、でも見逃したくない」という状況
「高値A」の時点で、買いエントリーをしようと考えているとします。
しかし、この「高値A」でエントリーしてしまうと、高値づかみになってしまうリスクがあります(押しの下落の流れにつかまってしまう)。
かといって、このまま様子見をしていると、そのまま上昇していってしまうかもしれません。
さあ、どうしましょう?
こういう状況でナンピンを使うと、上手くポジションをもてる可能性が出てきます。
大きな時間軸の方向へと反転していく場面でつかう
現在の状況を整理しましょう。
大きな時間軸のトレンドは上昇しています。
このチャートでも「押し安値」よりも上にレートがありますから、上昇トレンドが継続中であり、目線は「上目線」だと判断できます。
※もしここで「押し安値?」「上目線?」という場合は、以下の記事を参考にしてください。

買いエントリーをするタイミングが悩ましいわけですが、ここで計画的にナンピンをおこなうことで、結果的にどこで反転~上昇を再開したとしても、ポジションをもつことが出来るようになります。
具体的には、前回高値の赤い点線のレジスタンス・ラインがロールリバーサルしてサポートになる可能性を見込んで、まずその高値の上で一回目の買いエントリーをします。
そこで上昇していったなら、「それで良し」です。
反転せずに下落を続けた場合、次は押し安値の上でナンピン買いのエントリーをします。
今回のケースでは、ここで押し安値に支持されて再び上昇していき、計画的なナンピン手法が成功しました。
もし、レートが押し安値を下抜けてしまったら、それは想定していた動きにならなかったということで、いさぎよく二つのポジションとも損切りします。
※「ロールリバーサル?」「レジスタンス・ライン?」という場合は、以下の記事を参考にしてください。

ナンピンを有効に機能させるには?
このように、ナンピン手法を戦術的に有効利用するためには──
- 大きな時間軸の方向へのエントリーであること。
- サポート・レジスタンスラインを背にした、反転の根拠があるエントリーポイントであること。
- 計画的な損切りポイントが明確であること。
- ポジションサイズとナンピン回数のリスク管理がされていること。
──これらを徹底することが、とても重要だということです。
これらを無視したナンピンは、「ヘタのナンピンすかんぴん」という格言通りの悲惨な結果になってしまうでしょう。
下の記事では、一見すると有効に見えるナンピン手法が実はとんでもないリスクをはらんだものであり、その後大きな問題に発展してしまった出来事を解説しています。

不安と恐怖から逃げるためのナンピンをしないこと
損切りを先送りするための感情的なナンピンは、いずれ必ず大きな損失となってあなたを苦しめます。そして取り返しのつかない損失を被って、FXから退場せざるを得なくなってしまいます。
そうなってしまっては、FXで利益を得ることは夢のまた夢です。あの投資の帝王ジョージ・ソロスも、こう言っています──
「まず生き残れ。儲けるのはそれからだ」

生き残るためには、自分のトレードが想定違いだったことをいさぎよく認めて、損切りをすることです。
損切りそのものは敗北ではありません。
しばられていた証拠金を開放し、次のトレードへ向かうための、「資金の自由を取り戻す行為」なのです。そして、クリアになったアタマで、改めてトレードをしていけばいいのです。
あまりに大きなポジションで勝負し、さらにナンピンをしてしまったために破産してしまった、ある有名なトレーダーの話がありますので、参考にして下さい。

ナンピンの言葉の由来
ナンピンという言葉は、漢字では「難平」と書きます。「難」は「困難」をあらわし、「平」は「たいらにする」という意味を示しています。
つまり、困難な状況をたいらにする──無事に済ませようとする──ことを表しているのです。
この言葉の歴史は古く、江戸時代の米相場の世界でつかわれていました。江戸時代でも、ナンピンをするのは「損失を先送りする愚か者」という意味でつかわれていて、当時からナンピンのイメージは悪いものだったことがうかがえます。
以上、FX専門用語解説『ナンピン』とは?その意味を理解して戦術的にエントリーする方法について、お伝えしました。
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