「損小利大の手法でトレードするのが大切」という意見は、とてもよく見かけますよね。
あなたも頭では「うん、そうだよね」と思っているかもしれませんし、実際に試しているところかもしれません。
──ぶっちゃけどうですか? 損小利大のトレード手法で上手くトレード出来ていますか?
今回は、以前お伝えした「サイコロゲーム」をつかって、実際に損小利大の手法によるトレードを体験してもらい、損小利大手法のどこがスゴくて、どこが大変なのかを実体験してもらいます。きっと目が覚めるような実感と、新たな発見があるはずです。
もし、前回のサイコロゲームの記事を読んでいないなら、まずは下のリンクからどうぞ。
損小利大トレード手法の一般的なメリット・デメリット
損小利大トレード手法のメリットとして、まずあげられるのは、一回で取れる利益額が大きいため、資金がググっと大きく増えていくことです。
一回の利益額が一回の損切りよりもずっと大きいため、一度のロスカットが気にならなくなるので、チビチビ負け続けることへの抵抗が少なくなります。
その結果、ドカン!と利益を出すチャンスを手に入れやすくなるわけです。
そこでよく言われるのが、「損小利大のトレード手法だと、トータルで負ける気がしない」というものです。
なるほど、確かにそうでしょう。
では、損小利大のトレード手法のデメリットは何でしょう?
そこでは、メリットだったものがそのままデメリットになっていくのがわかります。
つまり、よほどエントリーを厳選するのでない限り、損小利大のトレード手法は勝率がとても低くなります。
狙う利幅にもよりますが、勝率30%前後だとか、良くても50%には届かない、という話もよく耳にします。
そうなると、小さいロスカットを何度も何度も繰り返すことになるわけで、こうなってくると、「負けるためにエントリーしている」ような気もちにもなってきます。
そのため、トータルで勝てると分かっていても、どうしてもメンタル的に心が折れてしまい、損小利大トレードを続けられないケースが出てくるのです。
損小利大のトレード手法のメリットとデメリット、分かった気になってませんか?
ここまで読んで、「そうだよね。だから損小利大の手法でトレードするのは難しいんだよね」と思っているかもしれません。
しかし、本当に理解した上で損小利大トレードを実践しているのなら、くじけることなく続けられているはずですし、結果も出ているはずです。
もし続けられないのなら、損小利大のトレード手法のメリットとデメリットを理解できておらず、その特徴を受け入れられてもいないことになります。
続けていても結果が出ていないのなら──
- 利大にするべき含み益のポジションを、小さくチキン利食いしてしまっている。
- エントリーすべきところで「もうこれ以上は負けたくない」と怖くなって、見送ってしまっている。
──といった原因があるのではないでしょうか?
あなたにとっては、耳の痛いことかもしれません。
でも、これからサイコロゲームという安全な場所で、損小利大のトレード手法をしっかりと実体験することで、これらの原因が解消されて、今までよりも損小利大トレードを実践しやすくなる可能性があります。
サイコロゲームで損小利大のトレード手法を実践する
それでは、さっそく実際にサイコロをつかって、損小利大のトレード手法を実践してみることにしましょう。
今回も、用意するものはサイコロひとつだけでOKです。
前回もいいましたが、これは自分の手を動かしてやることが、とても大事な要素なので、できるだけサイコロを用意して実践してもらいたいです。
どうしても手元に用意できないなら、下のリンクから「乱数メーカー」をつかってください。
リンク 乱数メーカー
典型的な損小利大トレードのルール
ルール
- 持ち点10ポイントからスタート。
- 「1,2,3」が出たら+2ポイント。
- 「4,5,6」が出たら、-1ポイント。
- 持ち点が30ポイントになるまでくり返す。
勝ちの目(1,2,3)が出たら、今回は+2ポイントしてください。
サイコロの目にしたがって、頭の中でポイントを足したり引いたりしながら、その数字が30になるまで続けましょう。
さあ、ジャンジャンふっていきましょう。
ちなみにこれは、勝率50%、利確が損切りの2倍(リスクリワード比が1:2)のトレードと同じです。
ここで少し「期待値」について
あなたも「期待値」という言葉は目にしたことがあるのではないでしょうか?
「もちろん知ってる」なら話が早いですが、もし「目にしたことはあるけど、イマイチよくわからない」なら、ここから簡単な説明をしますので、サクッと目を通していってください。
トレードの世界での「期待値」とは、シンプルにいってしまえば、勝ったり負けたりしながらトレードをくり返したら結局は、1回あたりどれだけの利益(損失)が出るのか?──を表したものです。
例として、あるトレードルールで5回トレードした結果が、次のようなものだったとします。
+20pips
+10pips
ー10pips
ー10pips
+20pips
差し引きで、トータル+30pips
5回トレードして+30pipsになっているので、平均すると1回あたり+6pipsの利益が出ていることになります。
この「(それぞれのトレードで勝とうが負けようが)1回あたりでは+6pipsの利益がでる」というのが「期待値」と呼ばれるものです。
この例の場合だと、トレード1回あたりの期待値は+6pipsとなります。
【参考】期待値の計算方法について
期待値=(勝率×平均利益)-(負け率×平均損失)
今回のケースを上の計算式に当てはめてみると──
(60%×(50pips÷3回))ー(40%×(20pips÷2回))=6pips
──となります。
つまり、このトレードを繰り返していくことで、一回ごとのトレードでの勝ち負けはありながらも、「期待値×トレード回数」の利益が想定できることになります。
早い話が、期待値がプラスの数字だと、やればやるほど利益が積み上がっていき、逆にマイナスの数字だと、損失がふくらんでいくということです。
さて、損小利大サイコロゲームに話を戻しましょう
典型的な損小利大トレードのルールでサイコロをふってみて、どうでしたか?
- 「なかなかポイントが増えていかないので、イライラした」
- 「何だか連敗が多い感じがして、ハラハラした」
そういう印象が強くなると思います。でも、
- 「連勝があると、一気にポイントが増えて気もちよかった!」
──なんていうことも、ありませんでしたか?
4連敗、5連敗となりながらも、そこから一気に2連勝、3連勝となって、一気にポイントが回復したこともあったのではないでしょうか。
とはいっても、やっぱり連敗が多くて、ため息が出るような場面が多かったのが、正直なところだと思います。
一回勝って二回負けて、一回勝って三回負けて、みたいな感じで、一歩進んで二歩下がるのを繰り返すような状況に何度もなっていませんでしたか?
この損小利大ルール、実は期待値は大きいのです。
ところで、今やってもらった損小利大ルールは、実は前回の記事でやってもらったルールよりも、なんと期待値は大きいのです。
おさらい──「前回のルール」
- 「1,2,3,4」が出たら、+1ポイント。
- 「5,6」が出たら、-1ポイント。
このルールから期待値を計算すると、およそ+0.33ポイントという答えが出ます。
つまり勝ったり負けたりしながらも、一回サイコロをふるごとに0.33ポイント増えていくわけす。
では今回のルールの期待値はというと、これがなんと+0.50ポイントなのです。
つまり前回のルールよりも、今回の損小利大ルールのほうが、やればやるほど早くたくさん利益が積み上がっていくのです。
それも、前回のルールの約1.5倍のスピードですよ?
「やってる間は、ぜんぜん増えていかない感じだったのに……」と、なんだか納得いかない気もちになりましたか?
それとも「そうか、勝ちがポンポン続く場面で、一気に利益を積み上げてるんだな」と気づいたかもしれません。
損小利大トレードの結果と、トレード中の感覚とのギャップ
あなたに実際にサイコロをふってもらうことで、損小利大のトレード手法のひとつの特徴が見えてきました。
- 損小利大トレードから得られるトータルの結果と、実際のトレード中の感覚との間には、大きな心理的なギャップがある。
損小利大トレードを続ければ続けるほど、利益はドンドン増えていくけれど、そもそもトレードを続けていくことが苦しくてむずかしいのです。
しかも、勝ちトレードが一時期にかたまって現れる場合も多いので、そのぶん長い期間、損切りトレードを続けなければならなくなります。
これが、世間で「損小利大のトレード手法が一番」といわれながらも、実際に損小利大トレードを続けられるトレーダーが少ない理由だといえるでしょう。
そこで、この「トレード結果とトレード中の感覚との大きなギャップ」をさらに実感してもらうために、こんな損小利大ルールも用意してみました。
この損小利大トレードは苦しい…!損切り祭りの果てにある利益
ルール
- 「1」が出たら、+8ポイント。
- 「2,3,4,5,6」が出たら、-1ポイント。
この損小利大ルールは、勝率はわずか16.7%しかありませんが、期待値は+0.33ポイントあるので、もちろんやればやるほど利益が増えるルールです。
暗算で+8をするのがちょっと面倒かもしれませんが、これもぜひ手を動かしてやってみてください。
どうです? この損切りの連発っぷり。
5連敗どころか、7連敗や8連敗なんかも平気で起こってしまいますし、もしかすると0ポイントになって破産してしまう、なんていうケースも体験するかもしれません。
逆に、ポンポンと1が出て、楽々と30ポイントになったかもしれません。しかし実際のトレードだと、そこで勝ち逃げして終わりにはなりません。
その後もトレードは続けていくわけですし、そこで連敗に出くわす可能性があるのですから、いずれこの損切り祭りに巻きこまれることは避けられない現実なのです。
実際のリアルトレードでこうなった場合を、ちょっと想像してみてください。
そして多くの人が「勝てないトレード」にハマっていく
多くのトレーダーは、損小利大のトレード手法でどれだけ勝てると分かっていても、連敗することへの恐怖が勝ってしまい、損小利大トレードを続けられません。
そのためチキン利食いをしたり、損小利大のトレード手法を使うことを諦めて、勝率が高い「損大利小トレード」へ突き進んでいったりするものです。
ただ、注意しないと、それらはトータルでは勝てないトレードになってしまいます。
具体的にサイコロゲームにして実験してみましょう。
チキン利食いは無限地獄の道
ルール
- 「1,2」が出たら、+2ポイント。
- 「3,4,5,6」が出たら、-1ポイント。
チキン利食いをすることで、いままでの損小利大の手法なら損切りになっていたトレードが利益になるケースが出てくるので、それを考慮して勝率を上げています。
このルールの期待値は±0ポイントですので、いくらやっても勝てません。
負けないのが救いですが、どれだけトレードを繰り返しても結果が出ない、なんとも恐ろしい状態になります。
勝率重視でコツコツ、ドカン!
ルール
- 「1,2,3,4,5」が出たら、+1ポイント。
- 「6」が出たら、-10ポイント。
いうまでもなく、これは期待値がマイナスのルールで、やればやるほど損失が増えてトータルで負けていきます。
にもかかわらず、目先の勝ちトレードがとても多くなるので、気分的にはとてもやりやすく感じるトレードだともいえます。
しかし、その「やりやすい感じ」は錯覚に過ぎず、いずれやってくる大きな損切りに落胆し、意気消沈することになるでしょう。
ちなみに、このコツコツドカン型のルールは、「思惑と反対へレートが動いても、いずれ戻ってくる確率が高い」という考えが背景になっています。
確かにFXではそういう傾向は見られるのですが、そう遅くない内に「耐えられないくらい反対へ動いていってしまう場面」が必ずやってきます。
そうなると、怖くなって大きな損切りをしてしまうか、FX会社から強制ロスカットされて、とても大きな損失を出すハメになるのです。
損小利大のトレード手法とどう向き合うか~まとめ
損小利大のトレード手法における、トレード結果とトレード中の感覚とのギャップ──これを実感したあなたは、これまでとは違った目線で損小利大トレードについて考えられるはずです。
小さく負け続けながらドカンと利益を得るトレードを、ハラをすえてやっていくのもいいでしょう。
「だから自分は損小利大トレードが出来なかったんだ」と受け入れて、利確と損切りのバランスを等しくしたり、無理に利益を伸ばさないようにしていくのも賢明な判断です。
ちなみに私も、無理に利益を伸ばさないタイプで、いうなれば「損小利小」のスタイルでトレードしています。
また、こうしたことを踏まえた上で、コツコツ勝ちを重ねるのが性に合っているなら、「あえて大きめの損切りをつかいながら、勝率を高くして小さく利益を重ねていこう」というのも、立派な選択だと思います。
今回の内容が、あなたの損小利大トレードの理解が深まるきっかけになったなら、嬉しく思います。
以上、損小利大トレード手法のメリット・デメリットをサイコロで理解する方法とは?、でした。