手元に余剰資金があると、すぐに欲を出してFX取引や投資で増やそうとしてしますが、喜びも束の間、結局は手痛く損失を出してガッカリしてしまう──。
私も、過去にそんな経験をした一人です。
今回は、私が過去に投資信託の分散投資で失敗したときのお話と、そこから見えてくる「FXトレードに活かせる教訓とアドバイス」についてお伝えします。
相場で誰かがした失敗から学ぶのは、効果的なリスク対策のひとつです。他人が代わりにしてくれた損失の痛みを通じて、賢く学んで下さい。
投資で「経済的なピンチ」から脱出しようとした私
今から20年ほど前、病気をわずらった私は仕事をすべて辞めて療養生活を送っていました。
自営業だったので生活保障があるわけでもなく、貯金を食いつぶす生活が続いたため金銭的なピンチに陥り、経済的な焦りと不安の日々を過ごすことになります。
仕事への復帰も出来ないまま経済的なピンチに陥り始めた私は、「そうだ、お金にお金を稼いできてもらおう」と考え、蓄えておいた余剰資金で投資をすることにしたのです。
投資の勉強を始め、ポートフォリオを検討
それまでFX取引はおろか投資というものに全く縁がなかったので、一から勉強するところから始まりました。
身近に投資やトレードをしている人もおらず、まさに暗中模索の状態からのスタートです。
初心者向けの資産運用の入門書を10冊ほど読み、そこから中級者向けの関連書籍にも手を伸ばし、ネット上で最新の投資情報を収集していき、こうして何とか知識だけは一人前になっていきます。
実はこのときFXのことを知ったのですが、「FXや株のデイトレードなどの投機的な短期売買は危険で失敗のもと!」という思い込みがあったため、検討すらしませんでした。
「堅実な自分は長期投資でいくのだ」とばかり思っていたのです。
さて、当初は個別株をいくつも買って、自分でポートフォリオを組もうと思ったのですが、資金的に満足な分散投資ができないことが分かったので、少額からでも柔軟に投資先を選べる「投資信託」を選択しました。
しかしこれが、後々足をすくわれて失敗に至る原因になっていきます。
分散投資をスタート
こうして為替取引(FX)には目もくれず、投資信託による分散投資を開始した私は──
- 「バイ・アンド・ホールド戦略だから、後は大きく含み益が育っていくのを見守るだけ」
- 「毎月、少しずつ追加投資を行っていこう」
こんな気もちで、徐々に資産が増えていくのを期待する日々を過ごしました。
当時は中国株バブルだった頃で、私の海外ファンドも半年ほどで+25%という、とても素晴らしいパフォーマンスを上げていました。
そして訪れるビギナーズラック
そうこうする内に、国内ファンドの値動きが何やら騒がしくなってきました。
数日おきに全ての投資信託の評価額をチェックしていたのですが、そのたびにある投資信託だけがグングン大きくなっていて、素人目にも普通ではない高騰が起きていることが分かります。
「この流れに乗って、一気に勝負するべきなんじゃないか?」
──そんな悪魔のささやきが聞こえましたが、これ以上の余剰資金は手元にないため買い増しを断念します。
ライブドア株に激しく翻弄される
さて、およそ投資信託とは思えない、この激しい高騰の理由は何だったのでしょうか?
察しの良いあなたなら、もうお分かりでしょう。
そう、あのライブドア株によるものだったのです。
当時のライブドア株は、完全にマネーゲームの様相を呈していて、買いが買いを呼ぶ青天井の上昇相場になっていました。
そしてやって来るのが「ライブドア事件」です。
2004年9月期の有価証券報告書に虚偽記載があるとして、当時の経営陣が起訴された事件。
堀江貴文(ホリエモン)氏に懲役2年6ヶ月の有罪判決が下るなどしました。
それはもう、猛烈な下落でした。為替相場でいうところの「ガラ」です。
毎日、目に見えて減少していく評価額。それは含み益でしかなかったはずなのに、何だか日々損失を出しているような錯覚に陥り、身が切られるような感じがしました。
幸い、他のファンドの成績に助けられ、全体としては「わずかに元本割れ」といったところで踏みとどまり、大惨事による大失敗とまでは至りませんでした。
しかし、あまりの変動を前にして意気消沈してしまい、その頃はもう送られてくるレポートには見て見ぬ振りをしていたのでした。
失敗した私の投資は「愚かなFX取引」そっくりだった
「お金にお金を稼いで来てもらう」──そんな当時の目論見はこうして儚くも消え去り、失敗に終わりました。
本当はこの失敗が起点となって、ここからが本当のバイ&ホールドの舞台となるはずだったのでしょう。
ですが、すっかり気落ちしてしまった私は、すべて解約して現金に戻してしまいました。
この投資が失敗してしまった要因としては、次のようなものが考えられます。
- 投資(長期投資)と投機(短期売買)の違いを理解していなかった。
- 出口戦略がなかった(緊急避難としての資金移動ルールなど)。
- 買い増し計画がなかった(気まぐれで増額させていた)。
- 暴騰や暴落による含み益の増減に一喜一憂していた。
- 高騰の原因を調べようとしなかった(浮かれていた)。
- 投資の資金分配バランスがどんどん偏っていった(含み益に目がくらんだ)。
- 何をもって投資失敗と認めるか、そして投資が失敗したらどうするかを全く考えていなかった(出口戦略・決済ルールが無かった)。
これを見ると、失敗するべくして失敗しているのが分かりますが、まずここから見えてくるのは、当初から投資の姿勢がブレまくっていたという事実です。
口では「バイ&ホールドで長期投資」といっても、本音は、当時見下していたFX取引や株のデイトレードと同様に「投機的に短期で利ざやを狙う」というものだったと言わざるを得ません。
表面的には投資を気取っていても、その実態は、トレード手法も何もない状態で感情的にFX取引を繰り返すような、トレード初心者そのものだったということです。
怖いのは、こうした自分の本音にまったく自覚がなかったことです。
あなたのFX取引に活かせる教訓とアドバイス
私の失敗した投資の体験をもとに、あなたのFXトレードに活かせる教訓とアドバイスをお伝えします。
FXトレードは出口戦略が重要
長期投資であれ短期売買であれ、必ず何らかの形でポジションを決済すべきときが訪れます。
いうまでもなく、FXトレードなどの短期売買では「損切りのルール」は必須です。
投資でも、事件や政変などが起こったときに資金を緊急避難させるルールがあれば、嵐が過ぎ去るのを安全な場所で待つことが出来ます。
もし投資でこうした出口戦略がなければ、何か有事があったときは、ライブドア事件での私のように、ただ狼狽えるだけになってしまうでしょう。
FXのデイトレードであれば、損切りルールを持たずにエントリーしてポジションを持つのは、強制ロスカットになることが約束されているようなものです。
損切りルールの重要性については、下の記事で詳しく解説しています。
また、下の記事ではFX取引での損切りの重要性について「閑散相場」をテーマに解説しています。
さらに、重要な経済指標の発表の前に一旦ポジションを決済しておくのは、FXトレードにおける大切な出口戦略のひとつです。
これは投資での資金の緊急避難と同様、「証拠金の一時避難」をおこなってリスク回避をしていると捉えることが出来ます。
もう一つ重要な出口戦略は、利益確定の決済ルールです。
- 「もう少し粘ってポジションをホールドしておけば、もっと利益を取れるかも……」
- 「せっかくの含み益を逃したくない!」
こういって結局利益を逃してしまうのは、FX取引での利益確定ルールが定まっていないからです。
「為替相場から取れるだけ取る!」という強欲な気もちだけでトレードしても、FXで安定した利益を重ねることは決して出来ません。
まず、確率思考に則って作られたトレード手法をもつこと。
そして、ときには含み益を吐き出してしまうことがあったとしても、自分が決めた利益確定の決済ルールを愚直に守り続けることが、FXトレードでは必要です。
自分のトレード手法への信頼を築く
私の投資は、とにかく感情的な判断に終始していました。
もともと曖昧で無いも同然のルールだったこともあり、買い増しのタイミングのときも、ルールをなし崩し的に無視してしまい、結局はその場の気分で判断していたようなものでした。
大事なところでトレードルールを曲げてしまうのは、そのルールへの信頼が乏しいからです。
感情でトレードルールを曲げてしまわないためには、トレードルールに対する信頼をしっかりと築いておく必要があります。
そのためにFXトレードで大切なのが、過去チャートを使った検証であり、FX練習ソフトを使った模擬トレードの積み重ねです。
チャート検証とトレード練習の取り組みの経験を通じて、エントリーや決済ルールを守り続けることが長期的な利益につながるのだということを、実感として理解しておくのです。
お題目のように、ただ「トレードルールを守るぞ」といっているだけはダメです。
それだといつか必ず感情が勝つときが訪れ、トレードルールを無視して損失を出してしまう日がやってきます。
繰り返しますが、FXトレードで必要なのは、自分のトレードルールへの信頼を築くことであり、そのための過去チャート検証とトレード練習です。
FXの為替チャートと向き合っているときに判断を迫られた際に、とっさに「自分のトレードルールに従うのが一番安心だ」と感じられるレベルになれば、トレードの悩みの多くは自ずと解消へと向かっていくものであり、無用な失敗から距離を置くことが出来るはずです。
失敗から得た教訓とFXのアドバイス~まとめ
人の失敗から学ぶのは、効果的なリスク対策のひとつです。他人が代わりにしてくれた失敗を通じて、賢く学びましょう。
長期投資なのに短期売買の利益に目がくらんだり、短期トレードなのに「長期投資だ」といって無闇にポジションをホールドし続けてしまうと、含み損を拡大させてしまうことになります。
FX取引の出口戦略として、ポジション決済のルール(損切りと利益確定、リスク回避のための決済)を明確に決めておくことが大切です。
肝心なトレード判断のときにトレードルールを無視したり曲げてしまわないために、FXでは日頃から過去チャート検証とトレード練習を通じて、自分のトレード手法への信頼を築いておく必要があります。
以上、FXを始める前の失敗談。トレードに活かせる教訓とアドバイスについてお伝えしました。