プロップファームとは、投資を専門に行うトレーディング専門会社のことです。
投資ファンドとは異なり、外部の出資者から資金を集めずに「会社の自己資金」だけで運用をおこなっています。
別名「プロップハウス」とも呼ばれます。
今回は、相場の世界の知られざるプレイヤーの1人である「プロップファーム」について、動画も交えながら解説していきます。
プロップファームがおこなうトレードの姿からは、私たち個人FXトレーダーが学ぶべき点が多々あります。
あなたが現在FXで勝てなくて悩んでいるなら、プロップファームのトレードの中に思わぬ解決方法が見つかるかもしれません。
プロップファームとは?
プロップファームとは、投資専門会社のひとつです。
ファンド(投資信託など)とは違い、顧客の資金を集めて運用したりせず、会社の自己資金だけを運用して利益を上げています。
投資ファンドを始めとした「他人の資産」を扱う会社の場合、運用に関しての条件や規約といったものが細かく定められています。そのため、自ずと保守的(ローリスク・ローリターン)な運用が行われがちです。
また、ある程度裁量が認められ、柔軟な運用が可能なヘッジファンドでも、顧客に資金を引き揚げられてしまうと運用に大きな支障をきたしてしまいます。
しかし「自分の資金」だけを扱うプロップファームではそういった制約がないため、積極的な「攻めの運用」が可能です。
このように、投資ファンド等とは異なり、他人のお金を運用していないことを理由に、外部への情報開示は極めて少ないか、もしくは全くありません(そもそも情報開示の義務が無い)。
そのため、プロップファームの実態は不明な点が多いとされています。
どうやって利益を上げているのか?
プロップファームの組織は基本的に、運用資金を出資して経営する「オーナー」と、その資金を実際に運用(トレーディング)する「トレーダー」とで成り立っています。
会社の運用資金は、プロップファームに所属するトレーダーたちによって運用され、利益が生み出されていきます。
所属トレーダーはプロップファームの資金を使ってトレードを行い、そこで出した利益に応じて報酬を受け取るケースが多く、おおむね完全歩合制といわれています。
例えば「利益の50%の成功報酬」だった場合、あるトレーダーが1か月に1,000万円の利益を上げたなら、500万円が成功報酬として支払われるわけです。
いうなればプロップファームは、優れた専業トレーダーたちの集団ともいえるでしょう。
損失を出したらどうなる?
仮にその月のトレード結果がマイナスだった場合は、その損失は「会社の損失」として計上され、原則としてトレーダー個人に弁済させるようなことはないとされています(会社運営側のリスクとして受容・管理されている)。
ただ、もし期間内に一定以上の損失(例えばー10%など)を出してしまったら、その時点でトレードを停止させられることになります。厳しいプロップファームだと、その時点で解雇(契約解除)となるケースもあるようです。
プロップファームでは厳密な資金管理が行われている
プロップファームには厳密な資金管理のルールがあり、各トレーダーに割り当てられた口座資金の許容損失パーセンテージはもちろんのこと、一日当たりの許容損失額なども厳密に定められています。
通常、各トレーダーの口座状況は、マネージメントシステムを通じてリアルタイムで監視されていて、トレーダーのヒューマンエラー(人為的ミス)を防ぐようになっています。
このような徹底した資金管理のもとで、所属トレーダーはそれぞれのトレードスキルを発揮しながら、日々トレードを行っていくわけです。
所属トレーダーはどんなトレードをしているのか?
このような環境の中、プロップファームに所属するトレーダー達は、日々どのようなトレードをしているのでしょうか?
実際はプロップファームによって様々ですが、多くの場合、何か一律のトレード手法が与えられているのではなく、各トレーダーが得意とするトレード方法を取らせているようです。つまり、トレードに自由な裁量権が与えられているわけです。
例えば同じプロップファーム内でも、目まぐるしく売ったり買ったりを繰り返すスキャルピングを得意とするトレーダーもいれば、一日に数回しかトレードしないデイトレーダーもいるという具合です。
私たちのような個人トレーダーと大きく異なる点は、プロップファームの所属トレーダー全体が、一つのチームのように連携しているケースがあることです。
例えば所属トレーダー同士、音声チャットでコミュニケーションを取りながら、動きのある銘柄やチャート状況をレポートし合ったりしているというエピソードが見られます。
下記のように、海外のプロップファームの様子を知ることが出来る本が出版されていますので、興味があれば参考にしてみて下さい。
(Kindle版あり)
- 著者:マイク・ベラフィオーレ
- 有名プロップファーム「SMBキャピタル」の内情がよく分かる一冊。
- 著者:カーティス・フェイス
- 指導を受けて伸びるトレーダーと駄目なトレーダーの違いが分かる。
プロップファームに所属するメリットは?
切磋琢磨し合って成長できる環境が得られる
所属するトレーダーたちはお互いにライバルでありながらも、プロップファームという同じ船に乗って(ひとつの運用資金を共有して)一緒に戦っている、戦友同士のような面があります。
ですから自然とトレーダー同士が相場情報を共有したり、トレーディングのアイデアを交換したり、さらには良い意味で競争し合えるような環境になっています。
このような環境の中で、自分よりも優れたトレーダーと交流する機会が得られることは、計り知れない大きなメリットだといえるでしょう。これは個人トレーダーには得られないメリットです。
またプロップファームによっては、トレーダーがスキルアップ出来るように手厚くサポートしてくれる場合もあるため、トレーダーとしての成長が促されやすい環境だといえます。
厳密なリスクマネジメントの恩恵を受けられる
通常プロップファームでは、管理者(マネージャー)によって厳密なリスクマネジメントが行われています。
例えば、トレーダーが感情的になって過大なポジションを持とうとしたり、過剰な回数のエントリーをしようとしても、リスク管理のルールによって事前に警告されたり、自動的に防止措置が取られるなどします。
ですから個人でトレードをするよりも、はるかに安全性の高い環境のもとでトレードをすることが出来るわけです。
結果として、個人で大きな損失を出してしまうような失敗を避けられると共に、日々のトレードのなかでリスク管理の大切さを実感しながら、リスク対策法を学んでいくことが出来ます。
トレードがビジネスであることが理解できる
厳密なリスクマネジメントのもとで、トレード成績を明確に把握しながら、日々の収益を重ねていく──こうした環境に身を置くことで、トレードが厳然たるビジネスであることが理解できます。
そもそも長期的に利益の出るトレードは、仮説と検証に基づいて「確率的な傾向」を見出し、その傾向に沿った行動をひたすら淡々と繰り返すことで成り立っています。
日々、自らがそうしたトレードを続けていくことで、トレードが「計画・実行・評価・改善」を伴うビジネスなのだと理解できるはずです。
また、プロップファームが所属トレーダーたちにトレードさせているその環境自体が、「確率的にプラスになる行動を淡々と続けること」そのものだ、ということにも気づけるでしょう。
大きな資金量でトレードするチャンスが得られる
トレード資金はすべてプロップファームが用意しますので、個人でトレードするよりもずっと大きなポジションサイズで取引することが可能です。
その際の損失はもちろん会社側が引き受けてくれますので、大きなポジションサイズのトレードを、金銭的には実質ノーリスクで経験することが出来るわけです。
もちろん大きなポジションサイズでトレードするためには、それ相応の実績を積み重ね、プロップファームからの信頼を勝ち得る必要があるのは言うまでもないですが、そのチャンスが開かれていることは大きな魅力です。
プロップファームの実際の様子を動画で見てみる
これから紹介する動画は、米国の有名プロップファーム「SMBキャピタル」のドキュメンタリー映像です。
SMBキャピタルはトレード経験者を集めると共に、若い未経験者を採用&教育しているのが特徴です。
このドキュメンタリーでは、若い女性の新人研修の様子が描かれていて、トレード未経験者の彼女が研修内容に四苦八苦している様子がうかがえます。
動画は英語ですが、トレードの経験があれば、おおよその内容は理解できると思いますので、プロップファームの雰囲気を知るためにも、ぜひ一度ご覧ください。
ドキュメンタリーは、主人公の女性が入社試験を受けるところから始まります。
彼女は大学卒業を控えた21歳の外国人で、デイトレーダーを目指しています(もちろんトレードは未経験)。
SMBキャピタルのトレードルームには若いトレーダーたちが大勢いて、主にナスダックのトレードをしている様子がうかがえます。
面接をする先輩トレーダーたちが、彼女にトレーディングの厳しさについて穏やかに、しかしハッキリと伝えているのが印象的です。
「忍耐力はあるか?」「精神的なタフさが要求される仕事だ」「最初は皆、必ず負ける(損失を出す)」といったことを、彼女は緊張した面持ちで聴いています。
入社試験に無事合格した彼女。いよいよ新人研修という名の「訓練」が始まります。
まずはデモトレードを通じて、数週間で基本的なテクニックを学んでいくことになりました。
株の板情報の画面を見ながら先輩トレーダーはいいます。「お金には言葉がないが、それを読み取っていく必要がある」──そういって、板情報に表示される「株数の変化」や「大口注文」が意味するものを研修生たちに教えます。
先輩トレーダーが相場状況をリアルタイムに分析しながらアドバイスする中、研修生たちはデモトレードの画面を食い入るように見つめています。
外国人である彼女は英語には自信があったものの、相場の世界独特の専門用語に苦労していて、ヘッドセットに流れてくる「支持線・抵抗線」などのテクニカル情報に上手く対応できず、苦しみます。
研修生たちが一室に集められ、イメージトレーニング(瞑想)を行っています。トレードがストレスフルなものになることが予想されるため、事前に「素晴らしいトレーディング」をイメージしているようです。
夕方、市場がクローズしたあとは、先輩トレーダーたちからのレビュー(評価)が待っています。
レビューの場で彼女は、専門用語を頭の中で翻訳するタイムラグによって上手くトレード出来ないもどかしさを伝えていました。
彼女の素質のこと、トレードで成功できる可能性について、厳しくシビアな話し合いが続きます。研修中にも指導があった「何にフォーカスするか(集中すべきか)」という点も語られます。
レビューを終えた彼女は、夜のレストランのアルバイトへと向かいました。今はデモトレードしかしていないため、SMBキャピタルからの報酬はゼロなのです。
新人研修と夜のアルバイトの連続で、とうとう彼女は体調を崩してしまいましたが、厳しい研修は続きます。
研修6週間目ともなると、彼女のスキルも目に見えて上達しているのが分かります。チャートを前にした合同レビューでは素晴らしい分析を披露し、先輩トレーダーからの同意も得られて満足げな様子です。
そして、ついに新人研修が終わった日の夜、SMBキャピタルの全員が参加しての“お祝い”が行われました。その会場はボーリング場です。
プロップファームの素晴らしいところ、それは情報の共有でありアイデアの共有だと彼らはいいます。SMBキャピタルという同じ船に乗って戦う、その戦友のような連帯感は、ボーリングに興じる彼らの姿からも伺えます。
「来週からはリアルマネーでトレードを始めることになる」と語る彼女の挑戦は、これからが本番です。
──YouTubeにはSMBキャピタルのチャンネルがあるので、興味があれば他の動画もチェックしてみて下さい(実践的なトレーディング・アドバイスも豊富です)。
リンク 「SMB Capital」のYoutubeチャンネル(英語)
プロップファームの姿から見えてくる『FX勝者への道』
ここからは、これまで見てきたプロップファームの特徴を踏まえながら、私たち個人トレーダーが見習うべきポイントを解説していきます。
次のようなポイントを理解して実践することで、あなたも「FX勝者への道」を歩める可能性が高まるはずです。
- 謙虚にアドバイスを受ける気持ちをもつ。
- 失敗は誰にでもある。ただし一度の失敗ですべてを失わないようにする。
- 自分のトレードをモニタリングできる指標をもつ。
- トレードをビジネスとして扱う。
①謙虚にアドバイスを受ける気持ちをもつ
「前を走っている先人から教えを受ける」──このことのメリットの大きさは、プロップファームの仕組みからもよく理解できます。
一人だけでトレードをしていると、何がまずいのかも分からないまま、実りのない努力を続けて堂々巡りをしてしまう怖れがあります。
そんなとき、外部から客観的に指摘してくれる存在がいれば、自分の盲点に気づいて、正しいプロセスへと立ち返ることが出来ることでしょう。
しかし、そこで必要なのは「アドバイスを聞き入れる謙虚さ」です。
「そんなことは言われなくても分かっている」「そこは問題じゃない」などといって、せっかくのアドバイスを聞き入れられないようでは意味がありません。
壁にぶつかって行き詰ったときに必要なのは、“変化”です。
今まで上手くいかなかったことをそのまま続けても、決して上手くはいかないのですから、そこで必要なのは、効果が見られないものや間違ったものを止めて、違うことを試してみることのはずです。
トレードの世界でも、伸びていくのは素直な人だという話があります。
私自身が頑固者なのでよく分かるのですが、素直にアドバイスに耳を傾けられる人は、ゴールまでの道のりがスムーズになる傾向があるのは間違いないです。
アドバイスを受けられる機会があれば、ぜひ謙虚に、素直に耳を傾けてみて下さい。
②失敗は誰にでもある。ただし一度の失敗ですべてを失わないようにする
プロップファームは「トレーダーはミスをする」前提で、様々なリスクマネジメント(リスク管理と対策)を実践しています。
リスクマネジメントの土台になっている考え方をひとつ挙げるなら、それは「一度の失敗ですべてを失わないようにすること」です。
人間だれでも感情的になってしまうことはあります。カーッとなって、大きなポジションでエントリーして「一発で取り返す!」と思ってしまうものです。
しかし、そうなってしまったとしても、その一度のミスで再起不能になってしまわないような「仕組み作り」をしておくことが大切なのです。
その具体的な対策としては、例えば「資金を3分割しておいて、そのひとつだけをFX口座に入金する」というルールを定めることが挙げられます。
このルールを守れば、仮に大失敗をして口座資金を吹き飛ばしてしまっても、あと2回、同じだけのチャンスが残っていますから、いくらでも再起することが可能です。
③自分のトレードをモニタリングできる指標をもつ
プロップファームでは、所属トレーダーのトレード成績は、すべて詳細に記録された上で評価が行われています。
会社によっては、そうしたトレード記録をもとに、改善点や伸ばすべき長所についてフィードバックが受けられる場合があります。
「自分のトレードの状況や特徴を把握すること」──これは個人トレーダーが長期的に利益を出していくためには必須といえるのですが、そのためには、しっかりとトレードをモニタリングする(観察して記録する)ことが必要です。
いわゆる「トレードノート」が大切だといわれる理由がここにあるわけです。
記録する項目は色々ありますが、エントリー&決済ポイントや勝率、ドローダウン、プロフィットファクターといった基本的なもの以外にも、「自分のトレードの調子の変化」が分かるような指標を含めておくのがおすすめです。
例えばその日のトレードを振り返った際に、「ルール違反の回数」をチェックしておくと、トレード成績の変化との相関関係が見えてくるため、こうしたモニタリング自体によってルール順守率が向上していく可能性があります。
もしトレードノートを書くことに手こずっているのなら、下の記事が役に立つでしょう。
④トレードをビジネスとして扱う
「未来の値動きを当てればお金が稼げる」──そう考えて目先のトレードで勝とうとするのは、単なるギャンブルに過ぎません。
そんなギャンブルトレードではなく、あなたもプロップファームと同じように、仮説と検証に基づいた「確率的な傾向」を武器にしてトレードをしていくことが大切です。
あなた自身がオーナー(資金提供元)として、かつリスクマネージャーとして、さらには所属トレーダーとして行動し、「あなたという名のプロップファーム」を運営していくのです。
このようにトレードをビジネスとして捉えることで、自然と次のような問いが頭に浮かぶようになるはずです。
- そのエントリーを、リスクマネージャーであるあなたは認めますか?
- 今週のトレード結果を見て、オーナーであるあなたはどう評価しますか?
- 所属トレーダーのあなたに対して、どのような教育や訓練をほどこす必要があると思いますか?
- あなたのプロップファームの事業内容を、第三者に説明できますか?
このような問いを持つことで、自らの行動への注意力が増していき、結果として無用な損失が減り、トレード成績を改善できる可能性が高まります。
いきなり「ビジネスとしてトレードをする」のはハードルが高いでしょうが、まずは「ビジネスのように振舞ってみる」ことから始めることで、少しずつ意識改革が進んでいくはずです。
プロップファームで働くには?
もしプロップファームで働きたい場合は、過去3か月~1年間のリアルトレードの結果(トラックレコード)を持って、会社の採用面接を受けるのが通常のパターンのようです。
原則として、実力を備えたトレード経験者を募集しているため、未経験者が採用される可能性は無いといえるでしょう。
現在トータルプラスを継続できていて大きな資金で腕を試してみたいなど、もし興味がある場合は、「プロップファーム 採用」「プロップファーム 募集」といったキーワードで検索して、個別に問い合わせをしてみて下さい。
ちなみに海外のプロップファームでは、トレード未経験者を採用して教育するところもあるようですが、国内ではそうした情報は見つかりませんでした(2019年2月現在)。
トレードスクールを併設しているプロップファームもあるが……
既に一定以上の実力を持っているトレーダーと契約するだけではなく、プロップファーム自らが教育機関(トレードスクール)を設けて、そこで指導しながら有望な生徒をトレーダーとして迎え入れる──そんな方法を取っているプロップファームもあります。
ちなみにこの方法だと、プロップファームは生徒から授業料を取りながら自社に向いた人材を育成できるため、会社的には上手いリスクヘッジになっているといえるでしょう。
こうした教育環境は人によって向き不向きが出るものですし、必要な費用もそれなりに高額です。
また、このような方式のプロップファームの中には、実体としては教育ビジネスをメインに収益を上げている組織もありますので、その場合は厳密な意味でのプロップファームとはいえないと思います。
プロップファーム~まとめ
プロップファームとは投資専門会社の一種で、ファンド(投資信託など)とは違い、会社の自己資金だけを運用して利益を上げています。所属するトレーダーたちは会社の資金を運用し、その成績に応じて報酬を受け取っています。
プロップファームでは徹底したリスク管理が行われていて、そこには個人トレーダーが学び取れる要素がたくさんあります。
プロップファームから見習うべきポイント
- 謙虚にアドバイスを受ける気持ちをもつ。
- 失敗は誰にでもある。ただし一度の失敗ですべてを失わないようにする。
- 自分のトレードをモニタリングできる指標をもつ。
- トレードをビジネスとして扱う。
あなたもこうしたポイントを実践していくことで、FXで結果を出せる可能性が高まることでしょう。
以上、『プロップファーム』とは?専業トレーダー集団から学ぶFX勝者への道──についてお伝えしました。