「デモトレードだと、緊張感がないから意味がない」とか、「少しでもお金が掛かっているほうが経験になる」という意見、あなたも聞いたことありませんか?
「デモトレードをやって練習できる人は、FXで勝てる人」だと、私は思っています。
今回は、お金をつかってリアルトレードでFXの練習していくリスクと、デモトレードで練習するメリット、そしてデモトレードならではの具体的な練習方法について解説していきます。
なぜ、リアルトレードでFXの練習をしたくなるのか?
リアルトレードで実際にお金をつかって練習しようとする理由は、いろいろ考えられます。例えば一般的な意見としては──
- 自分のお金が左右される状況で練習するほうが、真剣になって効果的だから。
- デモトレードだと緊張感がなくなり練習にならない。その結果、いい加減なトレードをするようになってしまうから。
──というものが見られます。
しかし、自分のお金が掛かってないと真剣になれないとか、デモトレードだと緊張感がなくなるというのは、FXで勝つための様々なトレーニングや準備をすることよりも、目先の利益を求めているということを示しています。
「機会損失を避けたい」という幻想
もうひとつ、リアルトレードで練習したい理由として耳にするものは、「せっかくの利益のチャンスがあっても、デモトレードではお金にならないから」というもの。
つまり「機会損失を避けたい」という理由です。
しかし、これは正しい認識なのでしょうか?
そもそも、練習している自分のトレード手法には優位性があるのだと、しっかり信頼できているでしょうか?
自分のトレードは、繰り返せば繰り返すほど利益が積み上がっていくトレードなのでしょうか?
もし、そういった検証結果がないなら、「リアルトレードでFXの練習をしないと機会損失になる」というのは、ただの幻想でしかないということになります。
優位性がハッキリしていないトレード手法でリアルトレードを続けると、ただの機会損失ではなく、本当の損失を重ねていくだけです。実際、そうやってFXから退場していく初心者は、後を絶ちません。
こういうと「だから練習してるんじゃないか」という声も聞こえてきそうです。
しかし、自分のトレード手法・ルールに優位性があるかを確かめることは、本来リアルトレードでなくても可能です。そもそも、そういう作業をリアルトレードでするのは、最終ステップなのです。
「今すぐ利益が欲しい」という気もちに正直になってみる
冷静になって考えてみると、リアルトレードで練習したいと思ってしまうのは、FXで勝つためのスキルを上達させたり、トレード手法の優位性を確かめることよりも、目先の利益を求めているからだ、ということに気づけるはずです。
この気もちに正直なることが、脱初心者のための重要なステップですし、なかなか勝てない中級者がブレイクスルーしていく”きっかけ”にもなります。
初めてFXを知ったときに、「まずは経験としてFX相場に実際に触れてみて、その感覚を確かめてみたい」というなら、リアルトレードを試してみるのは理解できます。
その場合は、参加費を払って体験するアトラクションのように、お金を払って──つまり損失が出るのを前提にして、小さなポジションサイズでリアルトレードを経験してみるのも、必要なステップでしょう。
しかし、いきなり本格的な資金量でFXをするのは、「今すぐ利益が欲しい」という感情の波に飲み込まれてしまっていると言えます。
「今すぐFXで利益が欲しいから、リアルトレードで練習したい」という気もちに正直になってみること。もしこれが出来るなら、多くの平凡なトレーダーたちを、ごぼう抜きにできる可能性が出てきます。
FXのリアルトレードの高揚感という甘美な罠
FXのリアルトレードには独特の高揚感(ドキドキわくわく)があるものです。
特に初心者や、一度でも大きな利益を得たことのあるトレーダーなら、「これぞFX!」とでも言いたくなるような、非日常的な高揚感を感じたことがあるでしょう。
しかしその高揚感は、長い目で見るとマイナスに作用する可能性があります。
ちょっと怖い話ですが、そのことについてお伝えしていきましょう。
高揚感それ自体が魅力的なものだから……
FXで感じる高揚感は、その多くは「お金が手に入るかも!」という欲望が生んだ感情です。これは強力な欲望なので、確かにドキドキわくわくするのも当然でしょう。
FXのチャートに向かってリアルトレードをすると、お金が手に入るかもしれないので、とても強い高揚感を感じます。
すると、徐々にこの高揚感(期待感)を味わうこと自体が目的になってくる可能性があり、そうなってくると、いわゆるギャンブル中毒のような状態になってきて、負け続けているのにリアルトレードをやめられない、ということにもなりかねません。
例えば、UFOキャッチャーで大金をつかったことがある人なら、ドキッとするのではないでしょうか?
「次こそは取れるはず!」という期待感から、どうしてもコインを入れるのをやめられなかったのは、こうした高揚感(期待感)によって、冷静な判断力を失ってしまっていたからです。
こういう心理状態でリアルトレードをするのは、もはや練習でもなんでもありません。
過剰な高揚感は感覚を麻痺させてしまう
人間というものは、感情によって爆発的な力を発揮することも可能です。
ピンチに陥った人が「火事場のクソぢから」を発揮するのが典型的なケースです。他にも、「自分がなんとかしなくては!」という使命感から、実力以上のパワーを出して人を助けたりも出来てしまいます。
とはいえ、そういった状態は自分の心身を一時的に麻痺させ、無理をさせることでパワーを発揮している状態ですから、そう長くは続けられません。
同じように、FXでの高揚感(利益へのドキドキわくわく)というものも、心身へのストレスやプレッシャーを一時的に麻痺させてくれますが、やはり無理のあるものです。
よく見られるのは、会社から帰ってきてから、夜中までFXを続けてしまうというケース。
完全に寝不足になって体調も崩しているのに、FXのリアルトレードの高揚感によって麻痺してしまって、チャートに向かわないと気が済まなくなってしまうのです。
そのトレードが、検証を経た優位性のある手法ならまだ救いがあるのですが、高揚感に任せて無謀なリアルトレードを繰り返してしまうと、体を壊してお金もなくす結果になりかねません。
FXをリアルトレードで練習するのは、ハンデ戦に勝とうとすること
いきなりリアルトレードでFXの練習をするのは、あなた自身が大きなハンデを背負って戦うということを意味します。
一説には、初心者の8割が半年以内にFXから退場してしまうとも言われています。
そんな厳しい環境で戦っていくなら、少しでもハンディキャップになるようなことを減らしていくべきです。練習と称してリアルトレードを繰り返すことは、大きなハンデのひとつなのです。
「激しい感情」というハンデを背負って練習する困難
自分のお金が掛かったリアルトレードでは、あらゆる感情が押し寄せてきます。
エントリーチャンスへの期待、損切りへの不安と恐怖、含み益が減る恐怖、さらには含み損が建値に回復することへの期待と不安、チャンスを見逃しているのではないかという不安──などなど。
こうした激しい感情のなかで、チャート分析スキルを身につけたり、エントリーと決済の判断スキルを磨いたりしていくことが、あなたには出来るでしょうか?
こうしたトレードスキルを身につけるためには、なにもリアルトレードをしなくても練習することが可能です。
それが、デモトレードなのです。
※とはいえ、「まずは経験として、FX相場に実際に触れてみて、その感覚を確かめてみたい」という理由で、リアルトレードをすることは否定しませんし、むしろ上達のステップとして必須だともいえます。
ですが、その場合でも目先の利益のためではなく、あくまでも「FXでポジションをもつという感覚を確かめるため」という目的を忘れてはいけません。
デモトレードで練習するメリット
デモトレードなら、良い意味で「目先の利益に影響がない」ので、お金を得ることへの高揚感(期待感)から距離をおくことができます。
トレードスキルを分解して練習できる
高揚感から距離をおくことができるようになると、一回のトレード結果とお金を得ることが無関係になります。ですから、チャート分析やエントリー&決済といったトレード判断のスキルを、分解して個別に練習することが可能になってくるわけです。
例えば、リアルタイムに動くチャートを前にして、冷静にチャート分析することを繰り返すことによって、チャート分析のスキルを正しく向上させていけます。
また、正しい損切りのスキルを身につけるために、一定時間ごとにポジションをもって、ルールに従って損切りをくり返す──こういう練習も、デモトレードだからこそ安心してできるものです。
FXのリアルトレードで正しく損切り練習ができますか?
あなたは損切りの練習を、お金が掛かったリアルトレードで、正しく練習し続ける自信がありますか?
高揚感にとらわれたリアルトレードだと、そもそも、こうして個別に練習しようとしても、なかなか上手くいきません。
なぜなら、感情的に一回のトレード結果に執着してしまいやすいので、練習していても、いつの間にか「利益を求めた、いつものトレード」になってしまいやすいからです。
ましてや、損失を前提にした練習(損切りや、トレーリングストップで損失を出すこと)をするなど、やろうとも思わないのではないでしょうか?
しかし正しい損切りの練習は、FXで勝ち続けるための必須スキルです。感情の影響を受けずに、この練習を淡々と繰り返して経験を積むからこそ、リアルトレードで感じる感情と正面から向き合えるようになれるのです。
ただただ恐怖におそわれて、おろおろと損切りをするのとは違い、「技術的には正しく損切りの行動がとれる」という自信があるからこそ、そこで生まれる感情がクリアに捉えられて、正しい改善策(さらなる検証や模擬トレードの実践)を試していけるようになります。
デモトレードに向いた具体的な練習方法
ここからは「デモトレードならでは練習」について、2つの具体的な方法を紹介しましょう。
練習1.「勝ち負けは1/2」淡々と利確&損切り
- 通貨ペアはお好みで、エントリーは「買い」か「売り」のどちらかに固定します。
- エントリータイミングは、いつでも構いません。
- エントリーしたら「+5pipsで利確」もしくは「-5pips損切り」を行います。
- エグジット(決済)したら、またすぐにエントリーして、同じようにエグジットを行います。
- これを、一定回数くり返します。
エントリーしたら、とにかく決めた条件通りにエグジットすること。そこから上がりそうでも下がりそうでも、とにかく決めた方向へ再度エントリーすること──これを繰り返して、「ルール通りに注文操作をする」という体験を重ねていきます。
この練習の効果
これは、心理的な抵抗のない注文操作というものを、無意識のレベルで定着させる効果があります。
やってみると分かりますが、何十回と続けても、そんなにボロ負けになることはありませんし、最初に決めた方向が大きな方向感と一致していると、けっこうなプラスになったりもします。
こうして、一回のトレード結果ではなくトータルの結果こそが重要だという、FXの本質である「確率思考」を実体験することが可能なのです。
これをリアルトレードでやろうとすると、かなりの抵抗を感じるはずですが、デモトレードなら、やる気さえあればできます。
練習2.無制限トレーリングストップで、ホールドの意識を変える
- 通貨ペアはお好みで、エントリーは「買い」か「売り」のどちらかに固定します。
- エントリータイミングは、いつでも構いません。
- エントリーしたら、-20pipsのトレーリングストップをおこないます。
- エグジット(決済)は、トレーリングストップに達したときだけです。
- エグジットしたら、またすぐにエントリーし、これを一定回数くり返します。
エントリーしたら、トレーリングストップの設定をして、あとはトレーリングストップに達するまでポジションをホールドし続けます。
トレーリングストップは、エントリーの注文時に設定しておいてもOKです(これをトレール注文と呼びます)。
エントリーしたら、トレーリングストップに達するまでは、どれだけ含み益が増えようがホールドし続けます。逆に、まったく順行することなくストップに達したら、その損切りを受け入れて、またすぐにエントリーします。
この練習の効果
これを繰り返してみると、エグジット(決済)するのはとにかく「最高値(最安値)から-20pipsの位置」なので、何だかいつも20pips損をしているような気分になるかもしれません。
しかし、この20pipsを差し出す覚悟をもつことで、流れに乗れれば大きな果実を手に入れることが出来るのです。
つまり、大きな利益のチャンスを得るための「手数料」を差し出している、ということなのです。
この練習を繰り返すことで、ポジションをホールドすることが「含み益を差し出すかわりに、大きな利益のチャンスを得ることだ」ということを、実感としてつかめるようになってきます。
このように、「自分が何を得るために、何を差し出しているのか」が自覚できるようになるので、リアルトレードでも、ホールドした結果を受け入れやすくなる効果があります。
この練習方法も、リアルトレードで実践するのは至難の技だということが、納得してもらえるのではないでしょうか?
お金が掛かったトレードで、「あそこで利確しておけば!」といって毎回感情的になっていては、こうした深い理解を実感することなど、とても望めないはずです。
デモトレードならではのFX練習方法~まとめ
ここまで見てきたように、FXをリアルトレードで練習すると、目先の勝ち負けに影響されてしまい、トレードの確率思考が身につかないので、結局ものすごい遠回りになってしまいます。
リアルトレードで感じる「ドキドキわくわくする高揚感」は、「お金が手に入るかも!」という欲望が生んだ感情です。その状態が続くと、その高揚感自体に中毒するようになってしまいます。
その高揚感は、トレード中の過剰なストレスやプレッシャーといったものを、麻痺させてしまう可能性があります。その結果、体調を崩すまでFXをするようになってしまうかもしれません。
こうした心理状態は、安定して勝ち続けるトレーダーの心理状態とは、まったく異なるものなのです。
デモトレードで練習して、スムーズに上達を
結局、無闇なリアルトレードでの練習を続けていると、FXの成功には近づけない可能性が高いです。
その反対に、デモトレードでFXの練習をすると、自分の感情に邪魔され難くなり、トレードのスキルをスムーズに上達させていくことが可能になります。
FXは、ただでさえ非日常的なスキルを身につけていく必要があるのに、そこへ加えて、自分の感情や欲望とも一緒に向き合おうとするのは、わざわざ目標達成を難しくするようなものです。
今回紹介した「デモトレードでの具体的な練習方法」を、ぜひ一度試してください。なにせ、デモトレードですから、やっても一円も損しませんよ(笑)。
以上、デモトレードならではのFXの練習方法とは?練習できる人は勝てる人について、お伝えしました。