あなたが日々トレードしているFX会社が、ある日突然「営業を停止します」といったら、どうしますか?
そこでの行動が、あなたの資金の運命を分けることになります。
今回は、実際にあった「FX会社の突然の営業停止騒ぎ」と、そのときの私の行動について、詳しくお伝えしていきます。
2012年、私のメインFX会社はGFT東京支店だった
2012年12月、その頃の私はまだ安定的なトレードができず、検証とデモトレードに明け暮れていました。
検証とデモトレードのツールとして、私の右腕になってくれていたのが、「Dealbook360」という高機能チャートツールでした。
これは「GFT」という外資系のFX会社の専用ツールで、当時すでに大人気だったMT4とは、また違ったキャラクターをもつ、個性的かつ高性能なチャートツールでした。
当時、国内ではGFTとFX取引をするための窓口会社がいくつかありました。
私はその中でも、直営の支店である「GFT東京支店」に口座を開設していました。
いつものようにチャート画面を開こうとしたら……
それは12月3日、月曜日の午前のことでした。
朝食を終えてパソコンデスクの前に座り、いつものようにDealbook360を開きます。
いつもならFX会社のサーバーと接続され、すぐさまレート配信がはじまるのですが、この日はいつまでたってもレート配信されません。
今日は「月曜日」。
そうです、週初めはFX会社によっては市場オープンの時間が遅くなっています。
「ああ、そうか。まだオープンしてないんだな」
そう思いつつも、よく考えたら今はもう10時をまわっています。
「いや、月曜のこんな時間になってもオープンしていないFX会社なんて、聞いたことがないって!」
「う~ん……ということは、GFTでサーバートラブルか何かが起こったかな?」
このときはまだ、その後の混乱を予想もしていませんでした。
まずは情報収集。GFTはどうなってる?
こういうときは、何が問題になっているのかを切り分けることが大切です。
まず、自分のパソコンやネット環境のトラブルによって、「自分だけがFX口座にアクセスできない状態」になっていないか、それをチェックです。
ブラウザーでは問題なくネット接続できていて、いつも通りにブラウズできていることを確認。
では、Dealbook360のエラーやバグによって動作しなくなっていないか、チェックしてみます。
これも普段の動作は一通りできており、不自然な動作は見られません。ただ単に「チャートにFX会社からレートが配信されていない」というだけの状態です。
これで一先ず、自分の取引環境が原因ではないということが明らかになりましたので、次はネット上でなにか障害情報が出回っていないか調べてみます。
当時リアルタイム性の高いFXの情報源として、まだ「2ちゃんねる」が有効でしたので、掲示板のGFTのスレッドをチェックしてみました。
思った通りそこでは、同じようにレート配信がされず不安になっている人々のコメントがありました。
「やっぱりGFTのサーバートラブル……ということなのかな?」
そう思い掛けたそのとき、衝撃的なコメントを発見します。
「米国のGFT本社が個人向けFX事業から撤退する」
この一文を見て、私の心はザワつきます。
「GFTがFXから撤退? それと今のサーバートラブルと、どういう関係があるんだ?」
「そうか! サーバートラブルじゃなくて、意図的にFX取引をストップさせてるんだ!」
「となると、証拠金はどうなるんだ?」
さあ、困ったことになりました。
米国のGFT本社が2日(日)に発表した内容によると、現地時間の2日夜に、米国の個人のFX口座のポジションはすべて強制決済されたとのことです。
これは、かなりの強硬策といわざるを得ないものです。
日本にこんなことを言ってくるFX会社があったとしたら、あなたはどう思いますか? 今まさに、そんなありえないことが目の前で起きていたのです。
「アメリカ企業、恐るべし……」と感じた瞬間でもありました。
こんな強硬策を取ってくるほどですから、GFT本社の状況は切羽詰まっている可能性があります。
見ようによっては、時間をかけて撤退するとGFTにとって不利なことが起きるということで、「短期決戦で逃げを打った」とも考えられます。
もしそうならば、このままアメリカの夜が明けたら、次は「GFTは倒産しましたので、よろしく」なんていう、ぶっ飛んだ展開も十分に可能性があります。
これは……マズイことになりました。
倒産しそうなFX会社から、自分の証拠金を守れ!
さて、日本で金融庁から認可を受けたFX会社は、国内・外資にかかわらず、顧客から預かった証拠金をFX会社の資産とは別の場所(信託銀行)に保管しておく義務があります。
この制度を「信託保全」といいます。
このおかげで、もし国内のFX会社が倒産しても預けていた証拠金はすべて保護され、手元に戻ってくることになっているのです。
GFT東京支店も日本の金融庁から認可を受けたFX会社ですから、信託保全はされています。
とはいえ、倒産してすぐに手元に証拠金が戻ってくるというわけではなく、そこには色々な手続きと長い時間がかかります(一説には数か月ほど必要といわれています)。
つまりかなりの長期間、大切な証拠金を拘束されてしまうことになるわけです。
これは、厳しい……。
となれば、やるべきことは、ただひとつ。一刻も早く証拠金をFX口座から出金することです。
12月3日(月)の昼12時、私はGFT東京支店の「出金依頼ページ」のリンクをクリックします。
──しかし、そこでまた驚愕の事実にぶち当たることになるのです。
「ありえない!」出金依頼ページが……
「とにかく現状を見る限り、いったん証拠金を全額出金しておくことがベストだ」
「このままのんびりとGFT東京支店からの発表を待っていたら、後手を踏むことになりかねないぞ……」
そう確信した私は、一刻も早く出金手続きをしようと、GFTの出金依頼ページに必要項目を入力しました。
「よし、これで送信、と」
しかしそこに表示された画面には、なにやら見慣れない、いかにもサーバーのシステムエラー的なメッセージが。
「うわあ、なんだこれは!?」
少々焦っていた私はこれを見て、「GFTめ、そうまでして出金させないつもりか!」などと思ってしまいましたが、ここは冷静になるべき場面だと思い直します。
「……とにかく、GFT東京支店へ電話しよう」
電話を手に取り、番号をプッシュ。
「あ、そもそも電話に人が出るのかな?」
そう思っていたとき、GFT東京支店の男性社員が出ました。
さっそく出金依頼ページの問題について伝え、「早くしてね♡」とおだやかにお願いして、電話を切ります。
相手の様子はおろおろしているといった感じで、どうやらGFT東京支店でも、個人向けFX事業からの撤退は寝耳に水だったようでした。
「担当のKさん、どうしてるかな……」と思っていると、電話が鳴りました。
「ご迷惑をお掛けしております。出金依頼ページが直りましたので、よろしくお願い致します」
よし、OK!
あらためて証拠金を出金する手続きを進め、無事に済ませて、GFTから確認のメールも届きました。
「ふう、やれやれ……。ひとまず、やれることはやった」
そう思いつつ、昼食を食べてメールチェックをしてみると、そこにはGFT東京支店からのメールが届いていました。
その内容は、こうです。
- 「米国GFT本社の決定として、個人向けFX事業の停止を決定した」
- 「あなたの口座を別のFX会社へ引継ぐオプションを用意している」
- 「日本時間12月3日午前9時からは、ポジションの決済は可能だが、新規のポジションを建てることはできない(当面、ポジションを持ち続けることは可能)」
いきなりの倒産&証拠金の拘束という最悪の事態はまぬがれたようですが、まだまだ予断を許さない状況です。
このメールを見ながら私は、「とにかく早く出金手続き完了の連絡が来ないかな……」と思っていたのでした。
そして、その後
数日後、無事に証拠金は全額出金されました。
GFT東京支店は事業を終了し、公式サイトのトップには今回の経緯がごく簡単に書かれていました。
12月14日には、東京支店から「別会社へ口座を引き継ぐことへの承諾」を求めるメールが届き、それへ「了承する」と返信をしました。
どうやら以前から米国のGFT本社は、個人向けFX事業で苦戦を強いられていたようです。
特に日本での事業は、レバレッジが50倍へ、さらに25倍へと縮小される規制をはじめ、監督省庁からの厳しい監視の目もあり、思うような事業展開が進められなかったようです。
そのためGFT本社は、法人向けの事業への一本化を進めることにした──ということでした。
さてその後、口座はプラネックストレードというFX会社へ移管され、そこからさらにFOREX.comへと移管されていくことになります。
こうしてたらい回しにされたGFT口座──なによりも、あの個性的かつ高機能なチャートツールDealbook360は、こうしてひっそりとFXの表舞台から消えていったのでした。
あなたにお伝えしたい教訓
この一件を通じて、あなたにシェアしたい教訓は次の通りです。
- 「もしも」は、いつか必ず起きる。
- そうなったときの行動を、あらかじめ決めておく。
- 最悪の事態を想定して、そのリスクへの行動をとる。
「もしも」はいつか必ず起きますから、起こったときには「なぜだ!」などと騒がず、「これからどうする?」と自問して行動をしてください。
理想としては、「もしも」のときの行動を事前にルール化しておくことです。
これは文字通り「トレードルール」と同じ発想です。
損切りルールや不慮のトラブルへの対応のチェックリストが、日々のトレードの安定性を高めるように、もっと広い範囲でもチェックリストを用意しておくと、GFTのような出来事があったときにも冷静に行動ができます。
「パニックになったら負け」というのは、トレードでも日常でも同じです。
そして、考えられる範囲で最悪の事態を想定して、それへの対応をすることです。
今回のGFTの件でいうと、「このまま倒産~証拠金の拘束」とか、「実は東京支店は信託保全が不十分だった」とか、そういう事態があり得たわけです。
そういう想定ができたなら、やることはひとつ。「可及的速やかに証拠金を出金すること」です。
そのためにやれることを尽くすのです。
私のケースでは、出金依頼ページが動作しないという、おまけトラブルにも見舞われましたが、「目標は出金することだ!」という意識がブレなければ、それでもやれることは見えてくるものです。
こうした教訓が、あなたにも役立つことを願っています。
以上、FX会社が突然営業停止!?実話エピソード「そのとき私はどうしたか」をお伝えしました。
もし、FX会社と証拠金のトラブルになってしまったら、いくつか相談窓口がありますので、そこへ連絡するのをおすすめします。
下の記事では、FXに対応した相談窓口について解説していますので、参考にしてください。