「レバレッジ」──それはFX取引の最大の特徴といわれ、とてもよく目にするFXの専門用語です。
しかしレバレッジの意味や、なぜ手持ちのお金の何倍もの取引ができるのか、その仕組みについては、よく分からないFX初心者も多いのではないでしょうか?
このあたりの仕組みが分かっていないと、なんとなく不安やモヤモヤが残った状態になって、FXに集中できないかもしれません。
今回は『レバレッジ』について、初心者にも分かりやすく解説していきます。
FXの『レバレッジ』とは?それはとてもスゴイ仕組み
レバレッジとは、テコの原理を意味する言葉で、少ない資金で大きな取引を可能にする仕組みのことです。
レバレッジは為替取引だけではなく、株の信用取引、商品先物取引といった様々な金融取引で用いられています。
このレバレッジという仕組みが、とても凄いものだということを実感してもらいたいので、少し具体的な話をします。
あなたの何気ないエントリー、実は○○○万円!
例えば、あなたがFX口座に「5万円」を入金したとしましょう。
FXではそのお金を元手に、売ったり買ったりしてトレードするわけですが、実際に取引している金額が一体どれくらいなのか、理解していますか?
順を追って見ていきましょう。
ドル円を「1万通貨」買ったとします(「買い」でエントリーした)。
今、サラッといいましたが、1通貨=1ドルのことなので、1万通貨を買ったということは、つまりあなたは「1万ドルを手にした」ということです。
その額は、日本円にしてなんと「約100万円」にもなるのです。
あなたは5万円しかFX口座に入金していないのに、約100万円分のドルをもっている状態なのです。
これってよく考えたら、スゴイことだと思いませんか?
日常の常識とは違う「FXのレバレッジの仕組み」
普通に考えれば世間一般には、手持ちのお金が5万円しかないなら、5万円までのものしか手に入りません。
「5万円しかないけど、その100万円の商品をちょうだい!」といっても、普通は売ってくれません。
ところが、FXには『レバレッジ』という仕組みがあることによって、手持ちのお金の何倍もの取引が可能になっているのです。
なんだか魔法のようで嬉しい話ですが、もちろんそこにはタネも仕掛けもあります。
そして、この仕組みの「タネと仕掛け」を知ることで、FXのメリットと、そこにあるリスクについて理解することが出来るのです。
レバレッジが実現できるのは、FXの「決済方法」に理由があった
少ない資金で大きな取引を可能にする『レバレッジ』という仕組み。
この仕組みが、なぜ実現できるのかというと、FXがある特別な「決済方法」を行っているからなのです。ここからは、例え話をつかって解説していきます。
あなたが、もし「貿易商人」だったら
突然ですが、ここで仮にあなたが、世界中の珍しい商品を買い集めて、それを日本に持ち帰って売る「貿易商人」だったとします。
あなたは、ある土地で変わった品物を見つけ、「これは日本で売れる!」と思ったので、それを買うことにしました。
取引相手は、その品物が日本円にして「10万円」だというので、あなたは「10万円」を支払ってその品物を受け取りました。
このとき、「10万円しか払わないけど、300万円分の品物をちょうだい!」などといっても、もちろん相手にしてくれないでしょう。
ともあれ、あなたは10万円で買った品物を日本に持ち帰り、それを「12万円」で売ることが出来ました。
その結果、差し引き「2万円の利益」を手に入れることができたわけですが、まあ、これだと「骨折り損のくたびれ儲け」ですね。
さてこの話は、極当たり前の普通の取引ですが、この話をしっかり踏まえてからFXの決済方法について知ると、驚きを感じられるはずです。
あなたが「FXトレーダー」だった場合
さて今度は、あなたはFXトレーダーです。
FX口座に5万円を入金して、ドル円のチャートを見ています。
「これは上がる!」と判断したあなたは、ドル円を「1万通貨」買います。
初めの方でお話したように、この時点であなたは「約100万円分のドル」をもっていて、これは元手の20倍もの金額です。
しかし不思議なことに、このときあなたは、約100万円分のドルを買うためのお金を、まったく支払っていません。
FX会社から、「100万円分のドルを買うために、いますぐ100万円を払って下さい」とは、ひとことも言われていないのです。
では一体、いつ、どうやって決済するのか?
さて、その後ドル円は判断通りに上昇しましたので、「よしよし、このあたりで利益確定しよう」と思い、あなたがもっている約100万円分のドルを手放すことにしました。
ここで、ようやくFX会社から「それでは今回の取引の決済をしましょう」と言われます。
FX会社はこういいます──「買った価格と決済した価格との、差し引き金額をチェックします」
そして、その「差し引き金額」は、今回プラス5万円だったので、結果として5万円の利益を手に入れることができました。
トレードが終わったタイミングで、「差し引き金額」だけを見て決済する──これが、レバレッジという仕組みを成り立たせている「差金決済」という方法なのです。
次に、この「差金決済」について解説していきます。
レバレッジの仕組みを支える「差金決済」
普通の取引では、商品を手に入れるタイミングで決済します。
10万円のものを手に入れるときは、その場で10万円を支払って商品を手にいれます──貿易商人の例でお話したように、当たり前の取引のスタイルです。
しかしFXでは、ポジションを手に入れる(エントリーする)タイミングではなく、ポジションを手放したタイミングで決済するのです。
しかもそのときは、「手に入れた価格」と「手放した価格」との差額だけをやり取りするのです。
この決済方法のことを「差金決済」といいます。
ざっくりいうと、「通貨を買ったとしても、どうせいつか必ず売るんだから、その差額だけを最後にやり取りすれば、便利でいいんじゃない?」ということなのです。
100万のものを手に入れて、それが105万円で売れたなら、差額の5万円を受け取りますし、95万円になってしまったら、5万円を支払うわけです。
要するに、トレードで生じた「損益の分だけ」を最後にやり取りしているのです。
そもそも、なぜ買うことができるの?
ここでひとつ疑問が出てきます。
そもそもFXで、ポジションをもつときにお金を支払っていないのに、なぜ買うことが出来るのでしょうか?
その理由は、FX口座に入金しておいたお金が、取引で損失がでたときの「支払い能力」を証明する「証拠」になっているため、FX会社はそのお金を信用して取引をさせてくれるので、お金を支払わなくてもポジションをもてるのです。
つまり、FX口座に入金しているお金が、差金決済で損失がでたときの支払いに使われることになっているのです。
そうです、だからFX口座に入金したお金のことを「証拠金」というのです。
FXのレバレッジについて、ここまでの話をまとめてみましょう
ここまでの解説を、まとめてみましょう。
①.レバレッジとは、少ない資金で大きな取引ができる仕組みのことです。
②.少ない資金でFX取引が可能なのは、差金決済という方法で「トレードで生じた差額(損益の分)」だけをやり取りしているからです。
③.差金決済で損失が出た場合の「支払い能力」を示すために、あらかじめFX口座にお金を入れておく必要があり、このお金のことを「証拠金」といいます。
いかがでしょうか?
いきなり、このまとめだけを読んでも意味が分からなかったと思いますが、ここまでじっくりと読んできたあなたなら、すんなりと分かるのではないでしょうか。
ここまで分かってくると、レバレッジの仕組みに関する色々な意味が、自然と理解できるようになります。
FXの「レバレッジ○○倍」の意味
さて、よく目にする「レバレッジ○○倍」というのは、どういう意味でしょうか?
答えからいうと「証拠金の○○倍の金額までのポジションが持てますよ」ということです。
日本の場合は、2018年現在はレバレッジが最大25倍ですので、証拠金の25倍までのポジションをもつことができます。
FX口座に「5万円」の証拠金を入金していたなら、最大で、証拠金の25倍の「125万円分」までのポジションをもつことが出来るわけです。
ちなみに、海外のFX会社だと、レバレッジが最大で400倍を超えるところもありますから、その場合だと「5万円」で「2000万円分」までのポジションがもてるということです。
レバレッジは大きいほど良い?
ポジションが大きければ大きいほど、同じ値動きでも利益の額は大きくなります。
5万円の証拠金でレバレッジが25倍だと、約1万通貨のポジションしかもてませんし、思惑通りに1円動いても、1万円の利益です。
しかしレバレッジが400倍だと、同じ5万円の証拠金で、なんと20万通貨近くものポジションをもつことが出来てしまい、思惑通りに1円動くと約20万円の利益になります。
このようにレバレッジが大きければ大きいほど、大きな利益をゲットできる可能性があるのですが、そこには当然リスクもあります。
差金決済のことを知ったあなたなら、このリスクの想像がつくと思います。
しかし多くの初心者は、このリスクを自覚していないため、「レバレッジは大きければ大きいほど良い」とばかりに、無謀なトレードをしてしまい、証拠金をすべて失うような事態に陥ってしまうのです。
レバレッジのリスク
ポジションが大きければ大きいほど、同じ値動きでも利益の額が大きくなるということは、同じように、損失の額も大きくなるということです。
この当たり前のことが、利益に目がくらんでしまうと、まったく見えなくなってしまいます。
そもそもあなたには、FX口座に入金した証拠金だけの支払い能力しかなく、証拠金が「5万円」だったなら、あなたの支払い能力は「5万円まで」なのです。
レバレッジに頼って大きなポジションをもてたとしても、その損失に耐えられるのは、あなたの証拠金の範囲までなのです。
この事実をしっかりと直視することで、あなたが相場で生き残れる確率は、グン!と高まるのです。
証拠金を上回る損失を防ぐための「強制ロスカット」
仮に、5万円の証拠金で1万通貨のポジションをもって、レートが1円、思惑と反対へ動いてしまったとしましょう。
そこで損切りして決済した場合は、約1万円の損失となって、証拠金からその金額が支払われます。
しかし、400倍のレバレッジで約20万通貨のポジションをもって、おなじように1円反対へ動いたら、どうなるでしょう?
あなたは5万円しか証拠金がないのに、差金決済によって「約20万円の支払い」を求められることになってしまいます。
しかし実際には、含み損の金額が証拠金を上回ってしまわないうちに、FX会社によって強制的に決済(損切り)されてしまいます。
これが、いわゆる「強制ロスカット」といわれるもので、この場合、証拠金以上の支払いは、まぬがれる可能性が高いですが、大きな損失になることは間違いないです。
大事なのはレバレッジの数字ではなく、具体的な損失額を想定しておくこと
こうしてみると、「レバレッジが大きくなればなるほど、リスクが高い」というふうに思いがちですが、実際はそうではありません。
大事なのは、具体的な損失額がいくらなのか、それを事前に想定しておくことです。
10万円の証拠金で1万通貨しかポジションをもっていなくても、思惑と反対方向へ10円動くのを放置してしまうと、強制ロスカットになって証拠金は消えてなくなります。
そのポジションがどれだけ動くと、どれだけの損失になるのかを、事前に具体的に想定しておくことが大事なのです。
損失額の具体例
例えば、ドル円やユーロ円といった「クロス円通貨ペア」の場合、1万通貨のポジションが100pips(1円)逆に動くと、10,000円の損失になります。
為替レートが動くときの最小単位のことで、読み方は「ピップス」、あるいは「ピプス」とも呼ばれています。
クロス円通貨ペアの場合、1pipsは1銭(0.01円)をあらわします。
同様に、5万通貨の場合、100pips動くと50,000円、50pips動くと25,000円、10pips動くと5,000円の損失になります。
こうした具体的な損失額を事前に想定しておくことで、証拠金の範囲内でレバレッジの仕組みから恩恵を受けながら、トレードしていくことができます。
損失額を想定しておくのは、FXのリスク管理の基本
あなたがエントリーしようとしている、そのポジションのサイズはどれくらいですか?
1万通貨? 5万通貨? それとも20万通貨ですか?
そして、そのポジションが10pips反対方向へ動いたら、どれだけの損失額になりますか?
ここで、それを知るための、かんたんな計算方法を解説しましょう。
ドル円やユーロ円といった「クロス円通貨ペア」の場合、1万通貨のポジションが1pips反対へ動くと「100円」の損失になります。
ですから、10pips動くと1,000円、100pips動くと10,000円の損失になります。
計算式で書くと、「ポジションサイズ÷100×pips」となります。
実例をあげて解説すると──
8万通貨で50pipsの損切りを想定している場合。
→ 80,000通貨 ÷ 100 × 50pips = 40,000円
3万通貨で15pipsの損切りを想定している場合。
→ 30,000通貨 ÷ 100 × 15pips = 4,500円
──となります。
慣れるとサクサク暗算できると思いますので、活用してみてください。
エントリー前にこの計算をしてみることで、もしかすると「なんて自分は、大きなリスクをとっていたんだろう……」と気づくかもしれません。
『レバレッジ』の意味とFX取引の仕組み~まとめ
レバレッジとは、少ない資金で大きな取引ができる仕組みのことです。
FXが少ない資金で取引できるのは、差金決済という方法で「トレードで生じた差額(損益の分)」だけをやり取りしているからです。
差金決済で損失がでた場合の「支払い能力」を示すために、あらかじめFX口座にお金を入れておく必要があり、このお金のことを「証拠金」といいます。
レバレッジの数字にだけ注目するのではなく、そのポジションがどれだけの損失になる可能性があるのかを、事前に想定しておくことが大事です。
以上、『FXのレバレッジ』とは?その意味と仕組みを分かりやすく解説について、お伝えしました。