FXの世界でトレードを始めたばかりのあなたは、今、どんな気持ちで相場に向かっているでしょうか。
もしかしたら、連敗が続き、「自分には才能がないのかもしれない」と、毎日チャートを見るのが辛くなっているかもしれません。SNSで輝かしい利益報告を見るたびに、「なぜ自分だけがこんなに負けるんだ」と、孤独感と焦燥感に苛まれているのではないでしょうか。
そして、いつしかチャートは、あなたの資金を虎視眈々と狙う「敵」のように見え、小さな値動きにも一喜一憂し、常に緊張で心臓が締め付けられるような感覚に陥っているかもしれません。
この記事では、そんなあなたが「メンタルがやられた」と感じた時に、一度立ち止まって考えてみてほしいことについて、お伝えしたいと思います。
その「頑張り」、本当にトレードのためになっていますか?
「メンタルが弱いから勝てないんだ」と、自己嫌悪に陥った初心者の多くは、そこから抜け出すために「もっと頑張ろう!」と心に誓います。
それは、まるで部活動の練習のように、気合いや根性で自分を奮い立たせるような「頑張り」です。私も、以前はそう考えていました。「もっと時間をかけてチャートを見れば、何か見つかるはずだ」「一回や二回の失敗で諦めてはいけない」と、自分を鼓舞したものです。
しかし、FXの世界において、この種の「頑張り」は、残念ながら全く意味をなさないどころか、あなたをさらに深い泥沼へと引きずり込んでいく罠なのです。
なぜなら、相場はあなたの「気合い」や「根性」とは一切関係なく動く、非情で機械的な世界だからです。
この精神論がトレードに持ち込まれると、どのような悲劇が起こるか、少し具体的に見ていきましょう。
- 損切りを躊躇し、「頑張って耐える」
ルールでは損切りすべき水準なのに、「あと少しで戻るはずだ」という希望的観測を根性で支えようとします。その結果、塩漬けとなり、最終的には許容範囲を大きく超えた損失、あるいは強制ロスカットという最悪の結末を迎えます。 - 優位性のない場面で「頑張ってチャンスを探す」
トレードチャンスは滅多に訪れないと分かっていながらも、「このまま待っているのは時間の無駄だ」と焦り、無理な場所でエントリーしてしまいます。いわゆる「ポジポジ病」です。これもまた、「とにかく何かやらないと」という焦燥感に駆られた結果の「間違った頑張り」です。 - 負けを取り返そうと「頑張ってロットを上げる」
立て続けに負けが続くと、「一気に挽回してやろう」という闘争心が湧いてきます。しかし、これは冷静な判断を完全に失った状態です。そして、ハイロットでのナンピンや無謀なトレードは、あなたの資金を一瞬にして相場から消し去ってしまうことになります。
これらの行動は、誰もが一度は経験する、初心者の典型的な失敗です。そして、これらはすべて「勝とうと頑張る」という、間違った方向への努力が引き起こした結果なのです。
相場に「勝つ」という結果を求めて頑張れば頑張るほど、あなたは感情に振り回され、トレードルールを逸脱した行動を繰り返してしまいます。
FXで本当に「頑張る」べきこと
では、私たちはどこに努力の矛先を向けるべきなのでしょうか?
それは、『トレードルールを淡々と実行するプロセス』です。
多くの初心者は「勝つために努力」しますが、プロトレーダーは「ルールを正しく実行するために努力」します。この違いは、一見些細なようでいて、トレードの成果を決定づける決定的な差です。
想像してみてください。あなたは、過去のチャートを徹底的に検証し、優位性があると判断したルールを基にトレードをしています。そのルール通りにエントリーし、ルール通りに損切りをした。結果は負けトレードでした。
この時、あなたは「負けた、ダメだ」と落ち込みますか? それとも、「ルール通りにトレードできた。これは次に活かせる貴重なデータだ」と考えられますか?
後者の思考こそが、FXで生き残っていくために必要なマインドセットです。
相場は、何回かに一度の勝ちを期待してエントリーする、確率論の世界です。負けは、その確率の分散の中で必ず訪れる、避けられないものです。
だからこそ、FXにおける「正しい負け方」とは、『優位性のあるトレードルールに従った結果として、淡々と損切りを受け入れること』なのです。
「正しい負け方」を覚えることが、メンタルを守る唯一の道
野球選手が、練習で素振りを何百回も繰り返すのは、その一回一回が「本番でヒットを打つためのデータ」だと知っているからです。たとえ空振りしても、それは「失敗」ではなく「上達のためのプロセス」です。
トレードにおける「正しい負け方」も、これと同じです。
ルール通りの損切りは、決して失敗ではありません。それは、あなたがトレードスキルを上達させるための、貴重な練習データなのです。
この『正しい負け方』を覚えることができれば、トレードで負けても、あなたは自己嫌悪に陥ることはありません。なぜなら、あなたはルール通りに実行したという、確固たる事実を持っているからです。
「メンタルが弱いから勝てない」のではなく、「正しい負け方を知らないから、メンタルが揺れる」のです。
まずは、あなたのトレードにおける「頑張り」の方向性を再確認してみてください。そして、トレードを『勝つための戦い』から『ルールを淡々と実行する練習』へと捉え直してみましょう。
その先にこそ、感情に振り回されることのない、本当の「強いメンタル」と、勝ち続けるための道が拓けてくるはずです。
以上、勝てないのはメンタルが弱いから?「頑張る」のその先にあるFXの「正しい負け方」とは──についてお伝えしました。