スリッページとは、売買注文が成立するとき、相場状況の変動(レートの急変など)によって生じる、注文したレートと実際に約定したレートとの差(ズレ)のことです。
スリッページが発生することを一般に「滑る(すべる)」と表現します。
スリッページが発生する仕組み
FX取引の注文方式のひとつである成行注文は、FX会社が注文を受け付けたタイミングの為替レートで執行される仕組みになっています。
ですのでレートが激しく変動している相場状況だと、FXトレーダー側のチャートで見ていた為替レートとFX会社側で注文を受けたレートとが異なるというケースが生じます。
そのため、激しい値動きが発生している中で成行注文でエントリーすると、思わぬレートで約定することになり、これがスリッページとして認識されます。
また逆指値注文の場合も、事前に指定したレートに達したら、そのタイミングで成行注文が執行される仕組みになっています。
具体的には、ある高値を少し超えたところに逆指値注文を置いた場合、高値をブレイクアウトして注文したレートに到達すると、そこで成行注文が執行されます。
この状況では、売り方の損切りと新規の買い注文が重なるため、レートが急激に上昇していく傾向があります。
そんな中で成行注文が執行されるため、注文していたレートよりも高いレートで約定する確率がとても高くなります。
その結果、大きなスリッページという形で現れるわけです。
許容スリッページ設定のメリットとデメリット
こうした思わぬ大きなスリッページで、不利なポジションを持ってしまわないために、FX会社が提供する取引ツールには普通、「許容スリッページ設定」というものが設けられています。
許容スリッページ設定を行うことで、この値幅以上に離れた為替レートでは約定しないようにすることができます。
しかしその反面、許容スリッページ以上のレートだった場合は「注文不成立(約定拒否)」となってしまいます。
この場合、成行注文や逆指値注文は約定されず、ポジションを持てない結果にもなりますから、許容スリッページの設定値は慎重に決める必要があります。
約定力の高いFX会社であれば、こうしたスリッページの問題が少なくて済む可能性があるため、約定力の高いFX口座を選ぶためにしっかりと調査・検討をする価値があります。
ポジティブ・スリッページというものもある
ここまでは、FXトレーダー側にとって不利になるスリッページ、つまり「ネガティブ・スリッページ」について説明してきました。
しかし本来であれば、激しい値動き(乱高下)のなかでエントリーや決済を成行注文で行う場合、売買注文の発注時よりも有利な為替レートで約定することもあり得るはずです。
この「FXトレーダーにとって有利なスリッページ」のことを「ポジティブ・スリッページ」と呼びます。
FX会社のなかには、約定力の高さとフェア(公平)な為替取引をアピールするところがあり、相場状況によってはポジティブ・スリッページも起きることを明言していたりします。
自分に合ったFX口座を探す際には、FX会社のスリッページへの対応状況について注目してみると、FX会社ごとの特徴や個性が見えてくるでしょう。
以上、FX専門用語「スリッページ・滑る」の意味と解説についてお伝えしました。