アルゴリズム取引とは、コンピュータが自動的に売買の注文を出す取引のことです。
コンピュータ・プログラムの仕組みやその手順のことを「アルゴリズム」というため、コンピュータを使った取引のことをアルゴリズム取引と呼んでいます。
アルゴリズム取引では、テクニカル分析や出来高が主に判断材料として扱われ、さらには、市場で流れるニュースや情報のキーワードなどに反応するシステムが組み込まれていることもあります。
近年ではハイフリーケンシー・トレーディング(HFT)という、ミリ秒(1/1000秒)単位で為替市場に売買注文を出す、超高速&高頻度の取引が主流となっています。
アルゴリズム取引は、リーマンショックの要因の一つにもなった
あらかじめ決められたプログラムによって、自動的に売買をおこなうため、想定外のできごとが起こったときには、思わぬ結果を招く可能性があります。
例えば、2008年にアメリカで起こったリーマンショックでは、機関投資家たちが運用していたアルゴリズムによって「売りが売りを呼ぶ展開」に陥り、大暴落を招きました。
これは、アルゴリズム取引の仕組みである「フィードバック・ループ」が暴走状態となってしまったためと言われています。
フィードバック・ループとは、自分の注文によって市場でどういう反応が起きたのかという「フィードバック情報」を踏まえて、次の取引行動を判断する仕組みのことです。
リーマンショックではこの仕組みが原因になり、アルゴリズムが「売りを執行した市場反応がこうなら、売り続けるしかない!」と判断してしまったといわれています。
アルゴリズム取引の市場での全体像は誰にも分からない
現在では「アルゴリズム取引」という言葉が独り歩きして、過剰・過大なイメージを抱かれている印象があります。
そもそも為替市場や株式市場では、これまでにも機関投資家らの自動システムによる売買取引は行われてきました。
そのテクノロジーとノウハウが急速な技術発展によって先鋭化し、ついにはミリ秒を争う自動売買システムが市場を席巻するに至ったという経緯があります。
このような自動システムの歴史や発展、そして機関投資家同士の激しい競争を経て、ついには複雑かつ高速なアルゴリズム取引という形で姿を見せるようになりました。
こうした「アルゴリズム取引の実体」や「アルゴリズム取引の全貌」は、もはや誰にも分からないといっても過言ではなく、だからこそアルゴリズム取引の暴走というトラブルは起きるべくして起きたといえます。
アルゴリズム取引を使った不正事件
このような自動アルゴリズムを使用した取引は、相場操縦を目的とした不正にも利用されています。
法律の抜けを突く形でアルゴリズム取引が用いられていることもあり、多くは民事問題として扱われているようです。
そしてその後を追いかけるようにして法律が整備されています。
こうした不正取引問題が起きやすいのも、実体が分かりにくいアルゴリズム取引ならではといった感があります。
以下の引用は、実際に海外と国内で起きたアルゴリズム取引(HFT)による相場操縦事件の一例です。
英国金融行為規制機構(FCA)が初めてHFTを利用した相場操縦を摘発した事件として、2013年7月、FCAが米国の投資家マイケル・コシア氏との間で、同人による欧州のエネルギー商品先物市場における石油先物など3つの商品に係るHFTを使用したレイヤリングにつき、90万米ドル超の民事制裁金を課す内容の和解を行った事例
これに続き、同月、米国商品先物取引委員会(CFTC)が、上述のコシア氏及び同人が代表を務めるエネルギー先物取引会社パンサー・エナジー・トレーディング・エルエルシーによる18種類の商品先物に係るHFTを利用したスプーフィングにつき、140万ドルの民事制裁金の支払いと140万ドルの不当利得吐出しを命じた事例
米国証券取引委員会(SEC)がアルゴリズム高速取引による相場操縦を最初に摘発した事件として、2014年10月、SECが米国ニューヨークを拠点とするHFT業者アシーナ・キャピタル・リサーチ・エルエルシーによるアルゴリズムを利用した終値関与形態の相場操縦につき、100万米ドルの罰金を課した事例
(アルゴリズム高速取引の相場操縦事例として公表されたものではないが、我が国での関連事例として)2014年9月、証券取引等監視委員会がアルゴリズムをツールとして利用して見せ玉の発注等を行ったシンガポール在住の個人による長期国債先物に係る相場操縦につき33万円の課徴金勧告を行った事例 等
引用元:『アルゴリズム取引とは?アルゴリズム高速取引の実態と規制動向』より
関連記事 『閑散相場』とは?フラッシュクラッシュのリスクと対策をチャートで解説
関連用語 自動売買、流動性
以上、FX専門用語「アルゴリズム取引」の意味と解説についてお伝えしました。